長年の経験と技術でカニの居場所探る
中野良一
トップページ > ニュース > 2015年2月 > 越前かにめし、認知度向上の好機 北陸新幹線の金沢開業で
カニの形をした赤い器がトレードマークの「越前かにめし」。1961年から販売する駅弁製造の老舗「番匠本店」(本社福井市高木中央3丁目)の山田和徳社長(60)は「認知度を高める絶好の機会」と北陸新幹線の金沢開業効果に期待する。新幹線車内や沿線の売店で、自社の駅弁を取り扱ってもらえるようJR東日本の関連会社にも営業活動を強め、準備を進めてきた。
北陸エリア全体を意識した新商品「三種盛り北国かに寿(ず)し」も開発した。ズワイガニの身やウニ、かまぼこなどを載せ、北陸新幹線をデザインしたパッケージを採用。越前かにめしを含めて車内販売に採用されるかどうかは未定のため、現在は福井駅のプリズム内などにある自社店舗で販売している。いずれは流入客に「北陸」、さらに「福井」の名を売り込む戦略を描く。
5日の試乗会に参加して「長野までが近くなったと実感した」と山田社長は話す。ただ「金沢の先には福井がある。福井を忘れてもらっては困る」と付け加えた。
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ものづくり力をアピールして販路拡大の突破口にしようと、金沢に進出した県内メーカーのグループもある。鯖江市の眼鏡関連業者を中心とした9社でつくる「鯖江“ギフト組”」は昨年11月末、百貨店「めいてつエムザ」の北陸特産品ゾーン「黒門小路(くろもんこうじ)」に出店。眼鏡素材を活用したアクセサリーやルーペなどの独自商品10点を並べ、2カ月弱で約40万円を売り上げた。
本県眼鏡業界は格安の中国製品の台頭で苦戦が続いている。ギフト組代表を務める乾レンズ(本社鯖江市丸山町1丁目)の諸井晴彦営業部統括部長(48)は、新幹線開業に沸く金沢への出店を「これまでメーカーはPR力が弱かった。鯖江の技術力を知ってもらうチャンス」と捉える。
狙いは購買力の高い関東方面からの観光客だ。土産品として認知されれば、本業の眼鏡商品の固定ファン拡大につながる―と鼻息は荒い。
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「今こそ、福井の商人の真価が問われる」。こう意気込むのは婦人服ブランド「BOSCH」などの小売店を福井、金沢の両市で8店舗展開するオーモリ(本部福井市中央1丁目)の大森伸夫社長(58)。両市の温度差を肌で知るからこそ、福井延伸までの取り組みの大切さを強調する。
同社は新幹線開業に備えて一足早く2011年9月、金沢で4店目となる店を、めいてつエムザ1階に出した。金沢フォーラスの既存店では、14年の売上高が前年比10%増となるなど「開業後も順調に伸びる」と手応えを感じている。
ただ大森社長は開業が迫るに連れ、金沢商業界の新たな変化も感じている。期待感による投資熱に加えて「最新ファッションを用意できなければ、地元客は首都圏に流出する、という危機感が強まっている」。ショッピングモールの運営会社は強気で、既存店に厳しい売り上げ目標を課し、施設内競争に拍車が掛かっているという。
創業の地である福井駅前の電車通り沿いの店舗を、自社発展の“シンボル”と位置付ける大森社長。「新幹線効果を取り込むには、県外資本の刺激を受け入れる覚悟が必要ではないか」。自らに言い聞かせるように、金沢開業に向けての決意を新たにしていた。