漁船と連携し品質を判断
田村幸次
トップページ > ニュース > 1996年10月 > 神戸市民笑顔の激励 越前ガニ安全キャンペーン
水仙と美しい海岸線、越前ガニ。越前海岸にとって冬は魅力たっぷり、観光客らでにぎわいを見せる季節のはずだった。しかしタンカー重油汚染事故による重油漂着で観光に大きなダメージを受けた。その海岸線を彩る花がある。寒風をものともせず水仙が清そな花を咲かせている。住民も今、事故に立ち向かい”復興の花”を咲かせようとしている。第二十二回水仙まつり(越前海岸観光協会連合会、福井新聞社主催)は二月十一日まで。
「大成功だった」。福井県越前町漁協の山口英男組合長は満足げに話した。同町漁協は二十九日、神戸で「越前ガニ安全PRキャンペーン」を開き、カニなど冬の味覚千百人分を無料配布した。午前中に引換券を配っていたにもかかわらず、午後二時の開始前から長い行列ができていた。「越前ガニは安全です」「越前海岸に遊びに来てください」。必死に訴える組合員や漁協婦人部の人たちの声は自然と力が入った。
一緒に配ったチラシにこんな一文がある。「風評被害は、漁民の死活問題にまでなっています」。セリ値が落ちているとはいえ、この日用意したカニやカレイを市場に出せば、漁民の収入になる。しかし、漁師たちは目先の自らの利益より越前町、さらに越前海岸全体のイメージアップを選んだ。山口組合長も「組合員からこの話が出てきたのはうれしかった」。無料配布のキャンペーンの開催は、同町漁協にとって初めてのこと。何を準備すればいいのか、どこに頼めばいいのか。分からないことだらけだったが、話が持ち上がってから五日間で開催にこぎ着けた。
神戸の人は温かく迎えてくれた。「神戸も福井も被災地同士。私たちも頑張りますから、皆さんも頑張ってください」。市民の声があちらこちらで聞かれた。ある女性が「何かに役立てて」と五千円の入った封筒を置いていった。油のふき取り用に使ってと、ウエスの入った袋を持ってきてくれた人もいた。カニを受け取った市民の笑顔が、組合員たちは本当にうれしかった。
一夜明けた三十日、漁協などに「おいしかった」とお礼の電話がたくさんかかってきた。実際に食べてもらい、重油の影響はないことを知ってもらおうという目的は果たした。「今度のセリは期待している。値は必ず戻る」。山口組合長は力強く話した。