漁船と連携し品質を判断
田村幸次
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カニは小さい頃から食べてきた。納谷さんに限らず越前町の人たちにとってカニは身近な存在。納谷さんにとってセイコガニの足、大根おろし、味噌、だし、卵などで作った鍋が“おふくろの味”だ。
漁業の町、越前町の繁栄を担ってきた越前がに。町の歴史やカニに関するあらゆることを紹介する「越前がにミュージアム」に赴任して2年が経つ。「今まではカニは『食べる』というイメージだったけど、この仕事をするようになっていろいろな角度からカニを見られるようになってきた」という。「例えば、越前がにが何回脱皮するのか知らなかった。毎日が発見の連続で教えられることだらけ」と振り返る。
今では、カニのことならなんでもござれの越前がにのスペシャリスト。観光客ら訪れた人に、カニの生態や漁獲量、漁の歴史など専門用語をなるべく使わず分かりやすく伝えている。「カニをまったく知らない人に説明するのは楽しいですね」と笑顔を見せる。
「カニの生態をより理解してもらえるように」との思いから、かにミュージアム独自の「かに検定」を企画した。検定は、3択形式で、合格すれば認定証がもらえるというもの。「越前がにの赤ちゃんの呼び名は?」「越前がにのデートスポットは水深何メートル?」などユニークな設問が多い。「これまでただ見て歩くだけで終わってしまう人が多かったが、真剣に見てもらえるようになった」と手応えを感じている。かに座生まれの人入館無料や、館内を全体的に暗くし青い光をともす「ナイトミュージアム」など、斬新な企画も次々と打ち出すなどアイデアマンとして活躍している。
カニとともに育ってきた納谷さんにとって、かにミュージアムでの仕事は?の問いに、「名誉なことですね」と胸を張った。(2010年11月)