「越前かに」の名付け親、知名度向上に貢献
壁下誠
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カニの仕入れを任されるようになって13年ほど。現在では5年前から「かねいち水産」のすべてのカニの仕入れを担当している。
カニは、仰向けにして見たとき、お腹や足があめ色であることと、甲羅の中心を押して、硬いほど身が詰まった良いカニです。白っぽいカニや黒っぽいものは、品質が良くないと思います。
仕入れる量は日によって異なりますが、10日ほど先までの天気を把握してその日に買う量を決める。カニが足りなくなり、顧客に迷惑をかけるのを避けるため、常にある程度の数を確保しなければならないからだ。
年末年始の数日間は休漁で、カニを買うことができないため、カニの価格が高騰する。特に12月末の仕入れは一番難しく「気が張る」という。
「カニは100匹いたらそれぞれが違う。良いと思ったカニでも顧客からクレームを受けることもある。一生勉強です」
ゆっくりコトコトゆでるのがコツ
1.5キロ以上のカニのゆで時間は約30分、1~1.3キロは25~27分くらい。400グラムほどの小さなカニは20分ほど。カニの大きさによって最適なゆで時間がある。1メートル四方、高さ約70センチの釜でゆでる。気をつけなければならないのは、ゆでる水の塩加減。「少しくどめで海水ぐらいのしょっぱさ」が求められるという。
曖昧な表現だが、水の量に対してどれだけの塩を入れるかは決められている。さらに「水を沸騰させないようにボイルする」のがポイント。カニの身をくずさないようにゆっくりコトコト“じわっと”ゆでる。
「食べ物なら何でもそう。スパゲティでもゆですぎたらダメ」
カニをゆで始めてから15年。1日に1000匹をゆでることもある。その経験に基づいた絶妙な“アルデンテ”を体で覚えている。しかし、目利きと一緒で「毎日が発見の連続。完璧はないですね」と語る。(2010年11月)