至高のカニを確実に提供
刀根瑛昌
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昭和21年創業の相木魚問屋の2代目。学生時代から店の手伝いを行ってきた。カニのシーズン中は今でも現場に立ち、カニのゆで加減を見守る。
釜場に入ると直径1メートルほどの大釜が4つ並び、コンクリートの台に埋め込まれている。釜の上部は地面から15センチほど高く造られており、釜と釜の間も人ひとりが通れるだけのスペースにしつらえてある。長年の創意工夫の末に今の形に収まった。
ゆで方は創業から続く同じ方法。まず、カニを真水に30分ほど漬けた後、専用のかごに入れて店自慢の大釜で塩水でゆで上げる。
ゆでの極意は3つある。塩加減、ゆで時間、火加減だ。
一番難しいのは塩加減。ゆでる人が自分の舌で感じて「味噌汁よりちょっと甘く」がポイント。塩にもこだわり赤穂の塩を使う。釜場の事務所の壁には「塩分濃度が一番だ。目安を自分の口で必ず覚えよ」と書かれている。ゆで時間も越前がにの中カニ~特大カニまでで18~25分とカニのサイズに応じて細かく設定されている。ゆで時間が少ないカニは、時間がたつと身が黒くなり商品にならず、長すぎると身がすいてしまう。一度に50~60杯をゆで、釜から上げた後、バケツで3~4杯の冷水をかけて身を引き締める。昔は鉄の釜で、石炭と薪を使っていた。今はステンレス製の釜をバーナーで熱する。釜の側面から熱を与えており、火力を均一にするため、ゆでている間は「手かぎ」と呼ばれる器具で釜を4、5回ほど回す。
実は相木魚問屋は「越前かに」の名付け親。県が特産として越前がにを売り出すより早く商標登録した。全国的なカニブランドとして昨今の知名度を獲得したのは壁下さんの力が大きい。
「かには海からの贈り物」。カニへの深い愛情が相木魚問屋のゆでがにの味を守り続けている。(2010年11月)