海岸部に点在する港周辺の集落を散策すると、漁師町とあって鮮魚店が目に付く。タイやマイカ、ハマチにブリ…。店頭に魚が並ぶ店をのぞいてみた。
訪れたのは、1973年創業の宮本鮮魚店(梅浦)。2代目店主の宮本明広さん(60)によると、近隣の店の中でも老舗になるという。売り上げは卸売りとインターネット通販が中心だが、創業時からの店頭販売にもこだわっている。
時季によって扱う魚は異なり、現在は主に町内の定置網漁で水揚げされ、朝に競り落とした魚がそろう。「バイガイを1キロちょうだい」「魚を刺し身にしておいて」などと、常連客が買い物に訪れる。
繁忙期はやはり11月からの越前がにシーズンだ。朝9時から競りに参加し、競り後の午後2時ごろからカニをゆでて各方面に発送・販売するなど、仕事は早朝から夜遅くまで続く。店にもカニを買い求める地元住民や観光客らがひっきりになしに訪れ、「毎日てんてこ舞い」という。
ただ、店頭でこうした魚を買える昔ながらの鮮魚店は、海岸周辺部でも少なくなっている。宮本さんは「越前がにでさえスーパーやネットで手軽に手に入る時代。だからこそ、お客さんと直接顔を合わせる店頭販売を残していきたい」と話す。