漁船と連携し品質を判断
田村幸次
トップページ > ニュース > 2008年11月 > 無情な海、甲板覆うクラゲやごみ 厳冬を追う、越前がに漁(1)
「ガーッ!」。うなり声を上げるエンジン音にようやく慣れた。出港から約十五時間後、日が沈み気温は三度。ライトに照らし出され、暗闇に甲板が浮かび上がる。雨交じりの強風が襲う中、五回目の網揚げが始まった。
海は気まぐれだ。漁師たちの熱い期待はまたもあっさりと裏切られた。ズワイガニは不漁。代わりに大型クラゲ(エチゼンクラゲ)の死骸(しがい)や漂流ごみが甲板を埋めた。
無情な海の仕打ちに、カメラを握る手から力が抜けそうになるが、漁師たちは「よくあること」という表情で黙々と網を回収していく。その横顔からは「次の網入れこそ」と静かな闘志が垣間見えた。
福井県の越前町漁協所属の底引き漁船「社丸」(一四トン)に乗り込んだ。船長や乗組員計四人とともに、午前二時前に越前町小樟漁港を出港。ひたすら沖合を目指した。船酔いには強いはずと思っていたが、漁場に着くまでに腹の中は空っぽになっていた。
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赤い甲羅と長い脚。越前がには、福井県の冬の味覚の王者だ。厳冬の海で行われる漁に密着した。(写真画像部・高橋良典)