越前がにならおまかせ
納谷一也
トップページ > ニュース > 2008年11月 > 待望の瞬間、網たぐる手に緊張感 厳冬を追う、越前がに漁(4)
カニを求めて次の漁場に向かう途中、雲が少しずつ夕日で染まっていく。幻想的な光景を船尾から眺めると、辺りには漁船三、四隻が明かりをつけ四、五百メートル間隔で航行している。みなカニを狙って周囲に集まっているようだ。もうすぐ日没。漁が始まる。
網入れは午後五時すぎ。既に周囲は真っ暗で、水平線には荒波を受ける漁船の明かりが大きく揺れる。海水や潮風によるカメラのダメージが心配だ。揺れに耐えきれず、レンズのフィルターを船べりにぶつけ割ってしまった。
網入れ後は一転、仮眠して待つ。一時間も休んだだろうか。引き揚げが始まると漁師たちの動きが慌ただしくなった。網をたぐる手が速くなり、刻一刻と増す緊張感。漁師たちの期待と意気込みが伝わってくる。
そのとき、海中から赤い何かが飛び出してきた。ズワイガニだ! 一パイ、また一パイと網にかかっている。思わず力が入り、気付いたら船べりから身を乗り出し夢中でシャッターを切っていた。