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刀根瑛昌
トップページ > ニュース > 2008年11月 > 牙むく波、大揺れも平然と作業 厳冬を追う、越前がに漁(2)
漁は自然との戦いだ。急激に天気が変わり、海が牙をむく。船首が白波を砕くたびに衝撃が走り、しぶきが雨のように降り注いだ。大きなうねりが船を揺らす。何度も頭から海水をかぶり、カメラをぬらした。
「こっちは(カニが)全然おらん。そっちもおらんのか」。ほかの船と無線で連絡を取り合う岩崎玉宏船長(40)。不漁は社丸だけではないらしい。岩崎船長は魚群探知機をにらみつけ、つぶやいた。「漁場を移動、カレイ漁に切り替える」 揺れる船上で、新たな獲物を狙う準備が始まった。甲板は前回揚がった大型クラゲのぬめりでぬるぬる。波も厄介だ。こっちは立っているだけで精いっぱいなのに、平然と動き回り網を取り換える漁師たち。海の男ならではの”妙技”に見えた。
言葉少なに淡々と作業をこなす傍ら、海を見つめる漁師たちの表情がふと緩んだ。目線の先、荒波を砕いて突き進む社丸の前方に、うっすらと晴れ間が広がり始めた。