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中瀬康雄
トップページ > ニュース > 北前船の町で〝帆待ち〟 坂井・オーベルジュ 本紙記者が宿泊体験 町家の趣やツアー、地産料理を堪能 三國湊 往時の隆盛実感
湊町の複数の空き家をリノベーションし、趣ある旧市街を一つのホテルに見立てた、新スタイルの分散型宿泊施設が先月末、坂井市三国町に誕生した。旅慣れた富裕層やインバウンド(訪日客)らの目には、北前船で栄えた町がどのように映るのか。本紙記者が1泊2日で宿泊体験してみた。
「帯の幅ほどある」と三国節にも唄(うた)われる町、三國湊。「オーベルジュほまち 三國湊」の客室棟は、その旧市街に9棟が分散して建つ。
まずは旧森田銀行本店近くのフロント棟(三国町南本町3丁目)でチェックイン。「どの部屋だろう?」とわくわく。「麻の葉」と伝えられ、玄関を開ける暗証番号が渡された。客室棟まで徒歩8分。近づいても「どこ?」と思うほど客室棟の外観は、赤茶色の町並みに溶け込んでいる。「ほまち」の青のれんで玄関口が見つかった。
木造2階の建物は、昭和の漁師の町家だったという。玄関に敷かれた笏谷石が美しい。2階には通りに面した格子出窓、天井に走る梁(はり)や屋根裏が昔をしのばせる一方で、キッチンや浴室、ソファは真新しい匂い。そのギャップが楽しい。
ディナーまでまだ数時間あるので、オプションのまち歩きツアーに参加した。地元の平林淳子さんの案内で、旧花街の出村周辺を歩く。かつては北前船で運んだたばこを売っていた古美術店へ。通りから九頭竜川の川湊まで突き抜ける廊下は50メートルもある。「船から降ろした荷物を店先に運んだり、船具のロープの長さを測ったりするのにも便利だったの」と同店の近藤克子さんが説明してくれた。北前船で栄えた往時を理解した上で、客室棟までの道を戻ると、湊町文化が実感できる。
夕食は「かぐら建て」を生かしたフレンチレストラン。この日は三国産甘エビや越前がに、昆布だしなど地ものをふんだんに使った独創的なメニュー。「ここでしか食べられない新しい料理を」と吉野建シェフ。
翌朝、外は冷たい風が吹いていたが、ゆっくり休んだ体は軽い。出航するのに良い風を“帆待ち”した北前船の船員も同じ気持ちでこの町を過ごしたのかと想像を巡らせた。