長年の経験と技術でカニの居場所探る
中野良一
トップページ > ニュース > 漁、競り・市場 > セイコと冷凍 求めやすく カニ水揚げ安定 2~3割安 資源保護の効果か ふくい農林水産スポット
冬を代表する味覚の一つ、セイコガニ(雌のズワイガニ)が今シーズン、買い求めやすい価格で推移している。県内外で安定した水揚げが続いているため、高騰していた近年の相場と比べ2~3割程度安く、「以前の水準に戻った」と話す関係者も。漁期は12月31日までだが、値頃となっている輸入物の冷凍カニと合わせ、物価高騰にさらされる年末年始の食卓には朗報と言えそうだ。
「セイコガニは現状、安定した水揚げがあり福井や石川、兵庫、鳥取県産でここ数年より店頭価格は2~3割安。求めやすい価格だからか、売り上げは2割ほど増えている」と話すのは、ヤスサキ(福井市)の鮮魚担当者。近年の資源保護の効果が出ているのではないかと見る。今月下旬のセイコの価格は、県外産の特売品で1匹400円程度、県内産でも1200円程度から並んでいた。
福井中央魚市の担当者も「雄はそれほど安い印象はない」としつつ、「セイコの競り値は平均するとここ数年より3割ほど安い印象。ここ数シーズンの高値圏を脱して元に戻った」と説明した。
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県水産試験場の調査によると、福井県沖のズワイガニの推定資源量は雄が3348トン、雌が1001トンで、いずれも過去10年で最高水準。この10年で最も少なかった2014年と比較すると、雄は約2倍、雌は約5倍で、特に雌の資源回復が進んだ。天候にも恵まれ定期的に出漁できていることもあり、福井を含む日本海西部各地でセイコの漁獲が安定しているとみられる。
今シーズン、国が配分した福井県分の漁獲可能量は前季比33・4%増の455トン。漁業者は自主規制を強化し、シーズン序盤の取り過ぎを防ぎつつ、安定した供給に取り組んでいる。
県によると11月末時点の水揚げ量は雄が73トン、雌が123トンで「ほぼ計画通りの漁獲量」(水産課の担当者)としている。
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鍋物などで活躍する冷凍のカニも、今年は比較的求めやすい状況という。海産物販売の増米商店(敦賀市)の橘高友樹社長は「昨シーズンの冷凍カニは過去最高値だった。新型コロナウイルス禍による生産縮小、リベンジ消費での需要急増、ロシアのウクライナ侵攻といった複合的な要因で、価格は右肩上がりだった」と振り返る。
今シーズンは一転して価格が下落。橘高社長は「ウクライナ侵攻で米国はロシア産を禁輸としたが、日本を含めアジア圏では流通しているのと、昨シーズンが高値で推移したことから世界的に在庫が積み上がり、今季は調整局面にあるため」と説明する。
同社のネットショップ「ますよね」で、1匹1キロ超の越前がにやタラバガニ、ズワイガニなどをランダムで送る福袋は、昨シーズンは1万2千円程度だったが今シーズンは8888円で販売。2割以上安いとあって、売れ行きは好調という。