長年の経験と技術でカニの居場所探る
中野良一
トップページ > ニュース > 越前がにの殻 アートに変身 福井県越前町・ミュージアム展示 企業制作 吉川壽一さん揮毫、立体造形に
捨てられるはずだった越前がにの殻を再利用したアート作品が、福井県越前町厨(くりや)の越前がにミュージアムに展示されている。作品は県内外の企業が協力して制作。粉末にした殻とプラスチックでできた50cm四方、厚さ3㎜のプレートが素材で、カニの殻により淡いベージュ色をしている。4枚をリングでつなぎ立体造形に仕上げており、表面の「越前がに」の文字は福井市のSYOINGアーティスト、吉川壽一さんが揮毫(きごう)した。展示は来年3月20日まで。
作品制作の発起人となったのは、海洋ごみを使ったアップサイクル商品の開発などに取り組む「ソリッドラボ」(福井市)の黒田悠生さん。ほとんどが廃棄されるカニの甲羅や脚などの殻を再利用できないかと考え、昨年12月から約3カ月かけて県内の飲食店やイベントを回り、3㎏ほどの殻を集めた。
こうして回収した殻を水洗いして乾燥させた後、工業用ミキサーで粉末になるまで細かく粉砕。放電加工などの「放電精密加工研究所」(本社神奈川県)に依頼し、殻の粉末をプラスチックと混ぜ合わせたフレークにした。このフレークを繊維強化複合材料を開発、製造する「丸八」(福井市)の協力で、薄いプレート4枚に成形した。
黒田さんが交流のあった吉川さんに取り組みを伝えたところ、ピンクや青色などの絵の具で「越前がに」や「越前がにミュージアム」としたためてくれたという。
作品は今年8月に完成。黒田さんは「多くの企業のおかげで作品として完成させることができた」と話し、カニの身だけではなく、捨てられる殻にも可能性や価値が秘められていると知ってもらえる機会になるのではと期待している。
今月8日から展示されており、同ミュージアムの山口渉館長は「同町でおいしい越前がにを味わうとともに、1人でも多くの人に作品を見に足を運んでもらいたい」と話していた。