長年の経験と技術でカニの居場所探る
中野良一
トップページ > ニュース > 漁、競り・市場 > 越前がに高騰 ズワイ競り値2割上昇 ブランド向上・時化続き出漁減 民宿、旅館 仕入れ苦慮
福井県の冬の味覚の王者、「越前がに」の取引価格が高騰している。県によると11月のズワイガニ1キロ当たりの競り値の平均は過去最高値を記録した昨年より2割上昇。最高ランク「極(きわみ)」の登場でブランド力が高まってきたのに加え、時化(しけ)続きによる出漁日数の減少などが要因とみられる。越前町や坂井市三国町の民宿や旅館は仕入れに苦慮し、宿泊料を値上げしたところもある。
漁解禁日の11月6日、越前漁港には「極」2匹が水揚げされ、1匹が過去最高の80万円の値を付けるなど、地元は活気と期待に包まれた。しかし、越前町漁協によると翌7日から約1週間、時化が続いて漁に出られなかった。その後も荒天が多く、11月の出漁回数は同漁協過去最少の5回。ズワイの水揚げ量は前年同月比5%減だった。雌のセイコガニもズワイの価格高騰に引っ張られ、1キロ当たり競り値の平均が昨年の1.7倍となっている。小林利幸組合長は「こんなに漁に出られなかった年は初めて」と首をかしげる。
県底曳網漁業協会は、旺盛な旅館の需要に対し供給が追いつかない状況で、価格高騰を招いていると指摘。県によると漁獲金額の6割以上を占めるズワイの11月の県全体の漁獲量は約56トンで、前年同月比1割減となっている。
越前町内の旅館では需要の高まりを予想し、価格上昇に備え宿泊料を昨年より約1割引き上げて今季を迎えたところもある。この旅館ではそれでも採算が合わず、12月に入って再値上げに踏み切った。経営者は「ズワイの仕入れが3万円以上かかると、1泊5万円でも苦しい」と苦渋の表情を見せる。
越前町内で旅館を営む越前海岸観光協会連合会の今村真美子会長は「カニ料理を出せなくなっている旅館もある。コロナ禍でキャンセルが相次いだ昨年以上の苦境」と声を落とす。
価格高騰と品薄の中でも、道の駅越前(越前町厨)の鮮魚店「越前うおいち」の客足は落ちていない。同店ではズワイは5万円~8千円、セイコは5千円前後。価格を昨年から据え置いた分、サイズは小振りにして対応しているという。山田真寿美店長は「1人で10万円以上購入する客もいる。年末年始にはさらに価格が上がるとにらんで、今のうちにまとめて買っておこうとしているのでは」と話している。