福井県が誇る冬の味覚、越前がにの取引価格が急落している。県のまとめによると、雄のズワイガニの1月の競り値単価は、高騰した昨年12月の半分以下に落ち込んだ。国の観光支援事業「Go To トラベル」で高まった需要が、停止によって一気に減少したことで、単価も平年以下に落ち着いた。ただ、11月6日からの漁期全体でみると、昨シーズンの1・4倍と高水準となっている。
県水産課によると、12月のズワイの競り値1キロ当たりの単価は1万5796円と、平年並みだった前年度の1・5倍となった。一方1月は、6648円と12月より約6割下がった。前年度と比べても15%安い。一般的に1月は12月より2~3割安くなるが、例年にない下落幅となった。
12月まではGoTo効果による需要増と価格高騰で、越前がにを提供する県内の旅館、飲食店はにぎわいながらも、仕入れに苦労し利益を出しにくい状況が続いた。12月下旬にGoToが一時停止となると、各旅館ではキャンセルが相次ぎ、カニの需要も落ち込んだ。
越前町で旅館や飲食店などを営む企業の経営者は「11、12月は予約分の仕入れに苦戦し、年末以降は大雪の影響もあってキャンセル続き。大変なシーズン」と、GoTo施策に振り回される状況を嘆いた。
一方、本年度の漁期全体でみると、ズワイの単価は1万2012円で、前年度の約1・4倍と例年にない高値となっている。1月末までの漁獲量は100トン(前年同期比28%減)、漁獲金額は12億200万円(同2%増)だった。しけの日が多く操業延べ日数が前年同期の約7割しかなく、漁獲量が少ないことも単価を押し上げた要因と考えられる。
ズワイの最上級ランク「極(きわみ)」の漁獲数は48匹で、前年同期より2匹少なくなっている。1匹当たりの単価は約1・5倍。
12月で漁を終えた雌のセイコガニの漁獲量は109トン(前年比6%減)、漁獲金額は4億2千万円(13%増)。1キロ当たりの単価は前年の1・2倍だった。
県水産課は「GoToの影響で取引価格は乱高下しているが、最終的な全体の漁獲金額は平年並みになるのではないか」とみている。