「かにまつり」のPRに奔走
池野政義
トップページ > ニュース > 古代天皇 和歌詠み舌鼓 角鹿(敦賀)の蟹
「この蟹や 何処(いづく)の蟹 百伝(ももづた)ふ 角鹿(つぬが)の蟹(このカニはどこのカニ。はるばる遠い角鹿のカニ)」―。古事記には、4世紀ごろ活躍した15代応神(おうじん)天皇が宴席料理を前に詠んだという和歌があり、カニが日本で初めて文献に記されたとされる。角鹿は敦賀(福井県敦賀市)の古名。古代、県産のカニは朝廷への献上品の一つに数えられていた。
角鹿は現在の敦賀市を中心に越前町なども含む領域。一帯を治めた豪族「角鹿氏」の系譜を受け継ぐ、福井市立郷土歴史博物館長の角鹿尚計(つのがなおかづ)さん(55)は「豊かな海の幸は古事記に残るほど喜ばれた。御食国(みけつくに)として朝廷の台所を支えた」とみる。
ところで、文献に出てくるカニの種類はよく分かっていないという。万葉集の記述を参照すると、淡水や汽水のカニとの説も有力らしい。「県民としてはズワイやセイコだと夢が広がるんですけどね」と角鹿館長。
文化人も同じ思いを抱いたのか。敦賀出身で江戸―明治期の日本画家、内海元紀(もとのり)は1874(明治7)年出版の詩画集「敦賀十勝」で「角鹿の蟹」を描写した。その姿は冬の味覚の王様「越前がに」にしか見えない。