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越前町、観光戦略が新局面  越前がに以外の目玉確立へ  「舟盛り」で活路

2020年03月31日

  福井県越前町の観光戦略が新たな局面を迎えている。越前がにという強力なコンテンツを武器に全国から多くの観光客を集めてきたが、カニの資源量減少が指摘されており、関係者には強い危機感がある。通年型観光地への転換へ、カニ禁漁期間の春から秋にかけての魚介類をアピールし、活路を見いだそうとしている。食のほか、歴史文化資源の観光活用も課題だ。

 
 ■転機
 
 内藤俊三町長が「観光立町」を掲げる町の観光振興で近年、二つの大きな転機があった。
 
 一つは2014年、越前地区に道の駅「越前」がオープンしたことだ。観光客が気軽に立ち寄れるようになり、効果は翌15年にすぐ表れ、年間110万~140万人台だった町全体の観光入り込み数が215万人に跳ね上がった。現在も220万人台を維持している。
 
 もう一つは15年に、合併前の旧4町村の観光協会を一本化して町観光連盟が発足したこと。旧町村ベースの協会単独では限界があった営業力や情報発信力が格段に上がった。
 
 観光振興態勢が整い、強力ブランドの越前がにの漁期である11月~翌3月を中心に積極的にアピール。全国放送の人気テレビ番組などメディアにも相次いで取り上げられ、一気に町への注目度が上がった。
 
 ■危機感
 
 それでも関係者の危機感は強い。日本海区水産研究所(新潟市)の研究チームが18年、ズワイガニの資源量が21年までの3年間で約半分に落ち込むという予測を立てたからだ。
 
 資源が枯渇すれば町全体が大打撃を受ける。町漁協の小倉孝義専務は「今のうちにカニ以外の柱を用意しないと」と語気を強める。
 
 対策として町は本年度から、カニ禁漁期間に取れる魚介類を生かした「新ご当地グルメ」の開発に着手した。出てきたアイデアが「舟盛り」。魚介類はその日の漁次第で内容の変動が大きく、主役を1種類に絞りにくい。そこを逆手に取り、カレイやタイ、アジなど多彩な地元の海の幸をアピールする戦略だ。
 
 2月に関係者向けに行われた試食会では、町内事業者がオリジナルの舟盛りを披露した。一般的な刺し身に加え、若者に飽きられないよう炭火焼きやしゃぶしゃぶ、アヒージョなどさまざまな食べ方を提案した。近年観光の主流となっている「コト消費」を意識し、調理体験も取り入れた。
 
 「日本初の舟盛りの聖地を目指したい」。5月からの販売に向け、開発に協力したじゃらんリサーチセンターエリアプロデューサーの齋藤晋作さんは意気込む。
 
 ■官民挙げて
 
 町内で観光客が最も多く訪れるのは「浜」の越前地区。通年型観光を目指す上で、客を「里」の朝日、織田、宮崎の3地区へ、いかに波及させるかも課題だ。
 
 開会中の3月定例町会では、議員から3地区の観光振興に関する一般質問が相次いだ。キーワードとなったのは「歴史文化」。劔神社(織田地区)、越前焼(宮崎地区)、幸若舞(朝日地区)など町内には核となり得る資源があるが、十分に生かしきれていないのが実情だ。内藤町長は答弁の中で「歴史文化資源の観光活用という視点が必要だ」と述べた。
 
 町の牧田芳広産業理事は年間17万人が来場する劔神社を引き合いに「周辺に土産を買う場があるだけでも違うはず」と指摘する。歴史文化資源を観光に生かし、いかに経済効果を生んでいくか。民間の努力と行政のハード面での後押しを車の両輪とし、官民挙げた態勢づくりが必要になる。

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