「越前かに」の名付け親、知名度向上に貢献
壁下誠
トップページ > ニュース > 2006年1月 > 越前ガニの資源保護は大丈夫か 福井新聞・論説
冬の味覚の王者といわれる越前ガニ漁が解禁された。初日はシケで漁獲量は少なかったようだが、ここ数年わずかながら漁獲量は上向いてきた。しかし、相変わらずの高値傾向が続いている。
越前ガニの漁獲量は、昭和三十七年の二千九十九トンが最高だった。高性能の漁船や漁網、漁法が開発されたためだが、その後は下降をたどっている。乱獲によるもので同五十四年には全盛時の十分の一の二百十トンにまで落ち込んだ。
このままでは資源が枯渇するという危機感から、さまざまな規制が行われるようになった。大きさによる捕獲規制や漁期の短縮といった自主規制のほか、増殖保護区を設定し、コンクリート魚礁を沈めるなどの対策を講じてきた。
こうした保護策が続けられた結果、平成四年から漁獲量の上昇が見られるようになってきた。同年は三百四十トン、翌五年四百二十七トン、六年四百八十六トン、七年五百二十三トンと、昨年まで四年間は毎年五十トン前後の漁獲量の回復をみている。
しかし、まだ全盛時の四分の一にすぎない。しかもこのまま増え続けるという保証はない。
忘年会シーズンも近づき、カニの出番だが、最近は越前ガニの代用品が出回っている。北海道産やカナダなどからの輸入ガニがかなりの量で入っているという。
こうした状況に顔をしかめる福井県民は多い。来年秋に福井市で開かれる「日本文化デザイン会議」の議長役を務める作家の山根一眞さんは「福井のイメージアップを図るためにも資源が枯渇している越前ガニを今後二十年間、食べないという県民宣言をしたらいい」とユニークな提言をしている。
県民が食べなくても県外市場に出回れば大した効果はないと思うが、精神論としては理解できる。そうではなく、操業そのものを中止するという提言としたら、どうだろう。恐らく漁業関係者の猛反発を受けるかもしれない。
越前ガニ漁は本県の水産業界にとって、売り上げのトップ魚種であり、漁業従事者の死活にもかかわる問題ということになろう。だが、この提言は全く話にならないと言う前に、考える糸口と受け止めたい。
これに似た発想が現実に秋田県で行われた。民謡に歌われている”秋田名物ハタハタ”である。同県水産漁港課の話では、最盛期には二万トンの水揚げがあったものが、平成三年には七十一トンにまで落ち込んだという。このため同四年十月から七年九月までの丸三年間、全面禁漁にした。
昨年十月、三年ぶりの解禁となったが、漁獲量は倍の百四十トンまでに回復している。解禁後も減船や操業期間の短縮、網目を大きくするなどのほか、適正な資源管理を継続しているという。
ハタハタほどひどい状況ではないともいえるが、越前ガニが将来的にも安定した水産資源として県内外にアピールするためにも、ハタハタの例を他山の石としたい。