「越前かに」の名付け親、知名度向上に貢献
壁下誠
トップページ > ニュース > 1997年11月 > カニ、エビ影響なし、風評被害こそ大敵 重油漂着で三国の観光業者
重油の漂着は福井県三国町の主要産業、観光にも大きな衝撃を与えている。日本海の代表的味覚・越前ガニと海岸の景勝を売り物にした冬の観光は今が最盛期。町内の民宿や旅館には問い合わせが寄せられており、関係者はイメージダウンを防ごうと、マスコミ各社に過大な表現に対し配慮するよう求めるなど懸命になっている。
三国町観光協会(道場幸信会長)は七日夜、町を通して報道機関にファクスなどで要望書を送付。「(町内や周辺の景勝地)すべてが被害を受けたわけではありません。ズワイガニ、甘エビ、タイ、ヒラメなどの深海魚については全く影響がありません。むしろ、何も心配のない報道をこの機会にぜひお願いします」と訴えた。協会青年部は同夜から、船首が漂着した現場で取材にあたる報道陣にも同じ文書を配った。
八日には同町安島の協会事務所で、緊急理事会を開き、報道機関への対応と重油の回収作業への応援体制について協議。今後、取材を受けた際にも、これらの点を強調していくことを決めた。
また、一日も早く景観を回復するため、重油の回収作業には積極的に参加。要請を受ければ町対策本部の指揮下に入り、百四十人の会員が九日からでも作業に出動することを申し合わせた。さらに荒天で延期された献上ガニについては、中止がイメージダウンになるとし、町を通し県へ強く実施を求めることにした。
目玉のズワイガニや甘エビについては、専門家の指摘でも影響はないとされているが、同協会所属の民宿・旅館には、これらの汚染について問い合わせがきている。影響はないとの説明で納得する人もいるが、県外客からのキャンセルもあるという。
道場会長は「風評被害が最も怖い。事態の推移を見守りながら、春の観光シーズンまでには、イメージアップのPRを検討したい」という。
一方、三国港機船底曳網漁協(吉岡辰組合長)や同港漁協(盛屋充保組合長)でも、漁場が重油にさらされたわけではないが、不安は隠せない様子。重油漂着前から、しけのため出漁しておらず、両組合長は「玄達瀬などの漁場近くを重油が通過しており、出漁してみなければ何とも言えない。なぎの日に船を出し、なるべく早く調査したい」と話している。