「越前かに」の名付け親、知名度向上に貢献
壁下誠
トップページ > ニュース > 1997年5月 > 新羽田に本県2店、越前がに空輸 「福井の力」世界の舞台へ
10月にオープンした羽田空港の新国際線ターミナルビルに、福井県から雄島館(坂井市)の回転寿司(すし)店と金子眼鏡(鯖江市)の2店が出店している。
同空港では国際定期便が運航再開し、来年2月までには世界11カ国に路線を拡大、日本と世界を結ぶ新たな玄関口となる。世界に向け「福井の力」を示す絶好の舞台といえるだろう。
2店が出店する商業ゾーン「江戸小路」は「Made In Japan~羽田Only One」がコンセプト。文字通り日本が誇る食や伝統技術を世界にアピールするのが狙いだ。30店余りが出店しているが、その中に福井の2店が選ばれた。
雄島館の回転寿司店「ありそ鮨(す)し」は外国人に最も分かりやすい食文化の紹介店といえる。東京で新鮮な日本海の魚介類を提供する日本料理店を経営してきた実績が認められ、羽田出店につながった。
既に寿司文化自体は海外に浸透している。その中で、いかに“本物”を味わってもらうかにこだわった。その日の朝に福井で揚がった甘エビや越前がになどを空輸し、寿司にして提供。開店当初から商業ゾーンの中でトップクラスの売上高を維持しているのは、質の高さへの評価だろう。
一方、眼鏡製造販売の金子眼鏡が出した直販店「金子眼鏡店」は、鯖江の眼鏡職人が作り上げているセル枠眼鏡などの自社ブランドを販売している。眼鏡枠販売は江戸小路の中では異色の存在にも見えるが、世界に誇る技術を紹介する点ではコンセプトに合致している。
同社の商品はアジア各国でも評価が高い。金子真也社長によると、取引のない海外の販売業者が都内にある金子眼鏡の小売店でわざわざ小売価格で購入していく例もある。初めて店名に社名を使ったのは「世界に向けた次の一手」(金子社長)。鯖江のメーカーの技術を世界に発信していく意気込みは強い。
両店に共通しているのは、世界市場の中でもとりわけ急成長中の東アジアをターゲットにする経営戦略だ。「ありそ鮨し」は、中国までのフライト時間の短さに注目し、お土産用の寿司も用意。中国内陸部までを市場として狙う。金子眼鏡も「アジア向けブランディングの再構築」を最重要課題に掲げている。
世界をリードしてきた「メードインジャパン」は中国などの新興国に押されて、今や低迷の一途にある。品質の高さやオンリーワンを世界にアピールし国際競争力を取り戻すことは、国として喫緊の課題だろう。国際ハブ(拠点)空港を目指す羽田への出店は、企業にとっても世界進出への足掛かりとなり、閉塞(へいそく)感を打破する戦略の一つといえる。福井の企業力の評価を上げる場になるよう期待したい。