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令和6年度 越前 蟹と水仙の文学コンクール 優秀作紙上紹介

2025年02月08日

蟹と水仙の文学コンクール

【主催】越前町【共催】福井新聞社

 令和6年度「越前 蟹(かに)と水仙の文学コンクール」(越前町主催、福井新聞社共催)の入賞者が決まった。全国に誇る同町の魅力「越前がに」「越前水仙」「越前海岸」を題材にした詩と俳句を募集。詩は3題共通のテーマとして「いのり」を設定した。詩は376編、俳句は3624句が寄せられ、両部門で大賞、優秀賞、奨励賞などが選ばれた。小学生の部から一般の部までの大賞7点、優秀賞7点、奨励賞7点を紹介する。

■詩

大賞

【小学生の部】

 「ぼくと水せん」

   月田 颯介(朝日2年)
ぼくはさむがりだ
水せんはさむさにつよい
ぼくはさむいとせなかが丸くなる
水せんはぴーんとなる
ぼくは黒いふくがすき
水せんはまっ白だ
でも水せんもぼくも
よくわらう

【中学生の部】

 「冬の訪れ」

  池田 光音(朝日2年)
冬だ。冬だ。冬が来る。
吐いた息が白くなる
手も悴んで赤くなる
じいちゃんが植えた水仙
まだまだかわいい蕾のまま
でも、もう少し、そのままで
冬だ。冬だ。冬が来る。
冬だ。冬だ。冬が来た。
真っ白に染まって冬化粧
どの家もみんな雪化粧
じいちゃんが植えた球根が
雪を掻き分け今、咲きほこる
そして、
また来年もその花を咲かす
冬だ。冬だ。冬が来た。

【一般の部】

 「いのり」

  森 久美子(三重県)
海岸の大岩に
太陽が隠れるまで
赤く染まる空を
私と見ていた

空と海の境が
なくなった深い夜
白く瞬く漁火を
私と数えた

雪の残る
張りつめた空気の朝
満開のすいせん畑を
私と歩いた


青白く滲んだ
水平線に現れた
光芒を
時を忘れて
見つめている

少し強くなった
私と
この空のどこかから
一緒に
きっと

優秀賞

【小学生の部】

 「だまっていたけどすきなんだ」

  坂下 詞音(織田1年)
やっとこのきせつがやってきた
ぼくのだいすきなもの
でもね。たべられない
パパのせいで
たべられない
アレルギーで
たべられない
ちかよるだけで
いやがられ
たべようとしただけで
いやがられ
ことしこそパパがいないとき
こっそりと
おなかいっぱい
たべたいよ
きいろのタグの
えちぜんガニ

【中学生の部】

 「また来年も」

  久保 海奈(朝日2年)
越前海岸に咲く
白くて甘いかおりで
見ると元気になる花

その年が寒ければ寒いほど
雪が深ければ深いほど
たくさんの白い花を咲かせる

どんな風にも負けず
吹風の冷たさにも負けない
かれんでやさしい
甘いかおりといっしょにゆれる
そんな水仙が私は好きだ

水仙に元気をもらって
今日もがんばろうと思える
何かいいことがあるような気がする

来年もまた
そのまた来年も
越前の海岸に
じまんの水仙が
たくさん並びますように

【一般の部】

 「うみへ」

  三刀月 ユキ(京都府)
うみへかえりたいといったか

北陸の海のそんなに深く青いのは
深く青い夜の無限の重なりの下に
波打ち続けてきたから
その青さに向かって
しろい花がなだれ なだれ すすんでゆく

手渡されたペンダント
-わたし おかあさんと
ゆきのふるくにへいくねん
おわかれのしるしに
わたしのたからもの あげる

たからものはどこいった
思い出の途中でほろっと落として
雪と太陽の群れ咲く越前の花のなかへ

ゆで鍋のゆらゆら動くセイコガニ
覗き込んで首かしげていた
-なんで うごいてんのん
動いてるように みえるだけなんや 言ったら
-うみへ かえりたいんやなぁ

ちょき ちょき かにさん
ちょき ちょき かにさん
2歳になる弟 ハサミの真似でおどっていた
甲羅の中の赤い粒々の命が舌に染みて
美味しくてなんだか泣けた

涙の中にもわたしたちの海はあるよ
水仙のかたちの可愛いペンダント
身を寄せ口づけあって咲く
ほんものの水仙の群れの中に
まぎれて いまも

うみのあおいくに ゆきのふるくに
大岩の突き出る海岸の深みで育つ命の粒
-かえりたいといったか
一緒にはかえれんけども またそこで会うてくれんか

■奨励賞

【小学生の部】

 「冬に咲く水仙」

  伊藤 悠成(朝日5年)

水仙の花って冬に咲くんだって

寒いのに花を咲かせるってすごいな

外に出るだけで顔が冷たくなるのに

水仙はつぼみを開いて顔を出す

ぼくは寒いのはきらいだけど冬は大好き

だって冬はクリスマスやお正月があるから

お正月は初もうでに行くけれど

一面にみっ集して咲いている水仙も

何だか初もうでしているみたいに見える

【中学生の部】

 「帰り道」

  原 瑞葵(香川県三豊3年)
帰り道

いつもの帰り道

でも今日は不安でいっぱいだ

その日は道徳の授業があり

戦争のことについて学んだ

その時ふっと

ロシアとウクライナが戦争をしている

そんな考えが頭に浮かんだ

私はこんなに平和にくらしているのに

同じ地球でおそろしい戦争が行われている

心がおしつぶされそうだった

そんな日の帰り道

下を向いて歩く帰り道

一輪の花が咲いていた。

水仙だった

私の気持ちを受けとめてくれるように

まっすぐにはえていた

不安を取り除いてくれるように

白くきれいに咲いていた。

水仙のような清く正しい世界になればいいのに

【一般の部】

 「アニキのお守り」

  平川 ミノリ(坂井市)
「おふくろさん。
大酒は のみません」
小さなお守りからでてきた小さな紙きれに
見覚えのある文字が記されていた。
まぎれもない 兄(あん)ちゃんの字だった。

あれから 半世紀。
二つ違いの兄ちゃんは七十五才。
兄ちゃんは 十五の春から
漁師のおんさん達に もまれながら
大海原へと 船をこぎだした。
今はさすがに 現役をはなれたが
蟹漁の初日だけは 船にのるという。
ある時は
病躯をおして 点滴をさげて 出漁したという。
若い時は
口で言うより手の方が早い時もあったっけ。
親父を 早く亡くして裸一貫。
よくぞここまでと 私は思う。
時には
高らかに ラッパを鳴らし
笑いも涙も うまい酒も苦い酒も
たっぷりたっぷり あびたことだろう。

蟹漁が 近づくと
どこにいても 雲の行方が気にかかる。
母ちゃんは いつも手を合わせていた。
無事であれ 安全であれ 豊漁であれと…。

四ケ浦( はま )から 初物のかにがとどく。
ふたをあけると 四ケ浦( はま )の においがする。
兄嫁( ねえ )さんが ゆであげた
つやつやの紅色の みごとなかに。
とびきりの一匹を 仏壇にそなえる。
むしゃぶりつくよに かにを食べていると
ふっと想いだす。
あの小さなお守りは どこへいったのだろう。

 詩・講評 祈りのことば 心にしみいる

 選者代表 荒川 洋治

 一般の部の詩の大賞には、森久美子さん(三重県川越町)の「いのり」が選ばれた。「私と見ていた」「私と数えた」「私と歩いた」というシンプルな表現のあと、「私と」ともにいた人の姿が空のなかに現れて、かさなりあう。いまは亡き人、あるいは遠くにいる人との、思い出の風景を見つめたものだろう。祈りのことばが、読む人の心にしみいる。感動的な作品だ。他にも、多くのすぐれた作品があった。

 選者代表 今村 秀子

 小学生の部大賞は、月田颯介さん「ぼくと水せん」です。選者の皆が一番と口をそろえたのは「でも水せんもぼくも/よくわらう」この結びです。水仙がよく笑うと心でとらえた言葉は、読む人たちも笑顔にしてしまう力があります。

 中学生の部大賞、池田光音さん「冬の訪れ」。水仙の花が咲く冬を待つ気持ちがリズミカルに表現され、「じいちゃんが植えた球根が」この一行で祖父の慈愛と作者の感謝の思いや、家族の温かさまでもが伝わってきました。

 高校生の部、今回は大賞の該当はなく、今道楊子さん「雨と風と水仙」と廣部愛さん「幸せ」を佳作に選びました。今道さんは写真風景から構想を練り、廣部さんは花の内面から発想、二人とも清楚(せいそ)な水仙の心髄に触れていました。

■俳句

 大賞

【小学生の部】
すいせんは未来のほうへむく花だ

  山塙 大翔(織田5年)

【中学生の部】
水仙は怒りをしずめる花なんだ

  久守 瑠唯(織田1年)

【高校生の部】
現代に生きる恐竜越前蟹

  岡本 樹(兵庫県神港橘3年)

【一般の部】
蟹漁に交じる異国語出港す

  塚崎 広美(鯖江市)

 優秀賞

【小学生の部】
ねえかにさんちょっとこわいわそのはさみ

  大越 花音(朝日1年)

【中学生の部】
水仙に語りかけたい願い事

  山内 颯大(宮崎2年)

【高校生の部】
だんだんと別れのきせつ水仙花

  北原 竜将(丹生2年)

【一般の部】
水仙に生まれて海を見て居りぬ

  亀田 勝則(栃木県)

 奨励賞

【小学生の部】
今年こそ1人でむくぞせいこがに

  嶋津 莉子(織田4年)

【中学生の部】
水仙は見返り美人要注意

  武田 和心(宮崎3年)

【高校生の部】
越前の海より青き鰯干す

  北村 由輝(武生1年) 

【一般の部】
摘みたての水仙くるむ割烹着

  角森 玲子(島根県) 

 俳句・講評 多様なる句

 選者代表 坊城 俊樹

 今回も多くの俳句が寄せられての審査は多様な素晴らしい句との出会いがあった。

 一般の部の大賞「蟹漁に交じる異国語出港す」は現代の蟹漁の実相を的確に描写した。さまざまな国からこの漁に参加しているのだろう。出港の時の異国語が飛び交う様子とその叙情がリアルに表現されている。写生句の中にも詩を感じる作品。

 小学生の部は「すいせんは未来のほうへむく花だ」はやはり柔軟な発想が素敵(すてき)。言われてみると水仙花とはどこか自由で好きな方向へ向いている気がする。それを未来とした観察眼はするどい。中学生の部は「水仙は怒りをしずめる花なんだ」はやはり情緒にあふれる作品となった。あの香りと美しさは誰しもの怒りや哀(かな)しみを鎮める。そこに気づいて断定した作者の感性はみごと。高校生の部は「現代に生きる恐竜越前蟹」はさすがに高校ともなると史実や事実を踏まえている。越前蟹のあの格好はたしかに恐竜のように厳(いか)つい。それが現代に現れるとこんなに美味(おい)しい蟹として皆の食卓を賑(にぎ)わす。この比喩のユーモアは格別。

 佳作

 【詩】▽小学生の部 倉崎海燈(四ケ浦2年)須磨未來(同2年)西ケ花碧海(城崎3年)▽中学生の部 原美乃(朝日1年)月田百香(同1年)佐伯音々(香川県三豊3年)▽高校生の部 今道楊子(埼玉県開智1年)廣部愛(福井商1年)▽一般の部 岩田彰峰(岐阜県)三ツ谷直子(京都府)大江豊(愛知県)

 【俳句】▽小学生の部 佐々木七彩(朝日2年)笠原彩加(同4年)森谷莉(同6年)▽中学生の部 棗隆人(武生五3年)坂葵(宮崎2年)宇野心音(朝日1年)▽高校生の部 武田恵菜(兵庫県神港橘3年)羽部ひより(丹生1年)福嶋泰斗(同1年)▽一般の部 大和田康夫(敦賀市)千葉れいか(福岡県)尾崎ひとみ(越前市)

 越前町商工会長賞

 【俳句】▽小学生の部 小林修也(今富3年)▽高校生の部 植原拓巳(群馬県高崎3年)

 越前町漁協組合長賞

 【詩】▽一般の部 山口明彦(越前町)

 【俳句】▽一般の部 白鳥雅敏(東京都)

 県農協組合長賞

 【詩】▽小学生の部 福岡莉菜(朝日5年)▽中学生の部 安井結有(朝日1年)

 越前町観光連盟会長賞

 【詩】▽一般の部 仲村多美子(坂井市)

 【俳句】▽一般の部 倉谷重瑠(敦賀市)

 選者

 【詩部門】荒川洋治(現代詩作家)今村秀子(詩人)張籠二三枝(文学研究家)向井清和(詩人)

 【俳句部門】坊城俊樹(俳誌「花鳥」主宰)和田てる子(「雪解」同人)村田浩(俳人協会幹事)中内亮玄(俳人)

 ※表彰式は、2月15日(土)午後1時30分から、越前町生涯学習センター・カメリアホールで行います。


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