競り落とすには度胸が必要
中橋睦男
トップページ > ニュース > 地域 > 【論説】三国港市場リニューアル 観光機能を強化、誘客増へ
福井県坂井市三国町の「三国港市場」が、大規模改修を終え生まれ変わった。イメージアップを狙い、競りが見学できる部屋や多目的スペースを設け、新たな観光機能を加えた。人が集まり活気ある市場になるのか、これからが正念場になる。
三国港は、福井県が誇る冬の味覚「越前がに」の水揚げで有名。皇室への献上も1922年から続いている。ただ、これまでの三国漁港の施設は築50年と老朽化し、県内水揚げトップの越前漁港(越前町)に比べ見劣りしていた。
近年の三国漁港は漁獲高の減少や漁師の高齢化など厳しい経営環境に置かれ、水産振興の拠点再整備は長年の課題だった。大規模改修は2024年春の北陸新幹線県内開業を見据え実施。ハード、ソフトの両面で県内外の観光客を迎えるための大胆なアイデアが求められよう。
坂井市は衛生・景観面の向上と観光機能強化を目指し、事業費3億2千万円をかけ21年6月から改修を始めた。これまで出入り自由だった競り場に、壁やシャッターを取り付け、汚水浸入を防ぐため床をかさ上げするなど衛生環境を向上させた。競り場もきれいにし、外観は坂井市産木材を用いたルーバー、内部の柱も杉材を巻いて装飾した。
にぎわい創出に向け、一般の人が越前がにや甘エビの競りを見学できるガラス張りの部屋を設置。多目的スペースでは朝市に合わせて食を提供するほか、6次産業化に向けて漁業者と地元が協力して商品開発などに取り組む場としている。広域観光情報も発信する拠点にしてほしい。
市場の再整備を巡っては、坂井市は県漁連との協議で市場施設を無償で譲り受け、昨年末に三国港機船底曳(そこびき)網漁協、三国港漁協、雄島漁協が、県漁連に代わる市場開設者として新会社の一般社団法人「三国港市場」を新設し、施設を管理することになった。
4月からは地場の水産物など市の特産を集めた日曜朝市を毎週開催している。全国各地で滞在型の観光地化を目指す動きがある中、競りや朝市が目玉となり、個人旅行客の観光ツアー商品になるのか。当面は手探り状態が続くと思われるが、話題を呼ぶ仕掛けを講じたい。
東尋坊や丸岡城など坂井市の広域観光振興に取り組む一般社団法人「DMOさかい観光局」との連携もさらに重要になろう。多くの市民や観光客が集う市場に向け、地元の協力を得ながら、食の安心安全や三国産の鮮魚、農産物を全国発信してほしい。