越前がにならおまかせ
納谷一也
トップページ > ニュース > 食 > 越前がにの次期スターは若狭ぐじ 金沢ノドグロに負けぬ逸品
今、金沢はちょっとしたノドグロブーム。金沢市内の料理店やすし店にはノドグロのメニューが並び、旅行本にも登場する。「ノドグロを食べるなら金沢」というイメージが定着し、テニスの錦織圭選手の「食べたい」の一言でブームに火が付いた。でも、海の幸だったら福井県はひけをとらない。新幹線が本県に延びたとき、「越前がに」と並ぶスター選手がほかにもあったら―。本県を代表する料理人に“次期スター候補”を探してもらった。
まず訪れたのは、「現代の名工」に選ばれた黒味傳(つたえ)シェフ(73)がいる福井市文京4丁目のフランス料理店「ジャルダン」。黒味さんの一押しは若狭ぐじ(アマダイ)だ。信頼するおおい町の漁師、子末哲也さん(41)から取れたてを送ってもらった。
黒味さん監修の下、一品目は平田康博料理長(51)が手掛けた「大吟醸の香りをつけた若狭ぐじのロティ」。切り身を塩と昆布で味を付けた日本酒にくぐらせ、オーブンでじっくり焼く。日本酒を使うことで特有の赤い皮目の色つやがよくなる。身は柔らかいが、あぶってあるのでしっかりした食感の後、独特の甘味が口に広がった。
藤井隆明副料理長(36)は春をイメージした「若狭ぐじと菜の花のヴァプール」。刻んだ菜の花を塗った切り身を蒸し上げた。アマダイのだしを使ったソースの上に、桜の花が入った泡状のソースがかけてある。菜の花の苦味をアマダイの甘味が追っかけてきた。
平田さんは県産ガサエビのムースも作ってくれた。ムースの中にはガサエビ、マッシュルーム、トリュフのあえ物が詰まっていて、ガサエビの強い甘味が楽しめた。
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和食はあわら市の温泉旅館「グランディア芳泉」の部谷(へや)保・総料理長(45)にお願いした。部谷さんが紹介してくれたのも、若狭ぐじ。「これほどうま味が濃い魚はなかなかない」と太鼓判を押す。
「素材をしっかり食べてもらいたい」と塩焼きに。切り身の表面には、朝日に輝く霜柱のように細かなうろこが切り立ち、食感は驚くほどサクサクで、後から深い甘味がじんわりと口に広がる。表面に高温の油をかけてうろこを立たせ、遠火でじっくり焼いて食感を出すのだという。うろこを残したまま焼く伝統的な「若狭焼き」のアレンジ。見た目のインパクトもあるので観光客の人気を呼びそうだ。
明後史英(みょうごふみひで)・本館料理長が選んだ食材は、旬を迎えた地物のハチメ。メバルの一種で日本海特有の白身魚だ。柔らかく煮付けに仕上げてくれた。福井人の舌に合わせて味付けは濃いめだが、脂が乗っているのでうま味はしっかり感じられた。
部谷さんは、越前町が「越前がれい」としてブランド化を進めるアカガレイやメギスなどもお薦めに挙げてくれた。和洋の料理人がそろって推す若狭ぐじのポテンシャルは、相当高そう。古くから京都で重宝されてきた歴史もある。まだ県内で広く食べられているとは言い難いが、まずは県民が好きになって「福井の若狭ぐじはうまいぞ」と県外に自慢しまくることが、スター輩出の第一歩になるはずだ。