「かにまつり」のPRに奔走
池野政義
トップページ > ニュース > 2012年1月 > 「越前がに」捨てるところなし 甲羅の成分にも注目
魚介類が栄養素としてバランスのよい食材であることを力説してきましたが、福井の住人として、「越前がに」をテーマにします。十一月六日から三月二十日のカニ漁獲の解禁時期となると、今年もカニを食べられる歓(よろこ)びが湧き出てきます。
越前がには、雄がズワイガニ、雌がセイコガニと、いずれもおいしいです。料理方法は、塩ゆでガニ、カニスキ、焼きガニ、カニみそを生かした甲羅焼きなど、カニそのものの味を生かしたものが一番好きです。生ガニを刺し身にしておいしくいただくのも大好きです。
栄養素としては、カニの身にはアミノ酸の一種、タウリンが豊富に含まれ、カリウムなどのミネラルも含まれています。カニの身を食べるとその甲羅はゴミになりますが、それに含まれるキチン(多糖類)とキトサンは、人の消化酵素で分解されない動物性の食物繊維で、脂肪の吸収を防ぐ働きがあり、血中コレステロールの上昇を防ぐことから注目されている成分です。また、甲羅の赤色の元となるアスタキサチンには動脈硬化やガン予防、老化を防ぎ、生活習慣病にも効果があると期待されます。カニはおいしく食べるだけでなく、たくさんの効能をもったすばらしい食材です。
キトサンはグルコサミンがたくさん結合した天然のアミノ多糖体で、エビやカニの甲羅にあるキチンを脱アセチル化するとできます。セルロースとの分子構造の相違をみるためにそれぞれの化学構造式を示します。
カニは水分の多い魚介類で、塩ゆで上げたカニの身を殻から取り外そうとしますと、カニ汁があふれ出ます。この汁にも栄養分が含まれているので、一滴も逃さないように食べることもポイントです。カニの身はタンパク質が豊富なのに低カロリーで、うまみの元になるアミノ酸、グルタミン酸、グリシン、アルギニンを含んでいるので、健康な身体を作るためには欠かせない食材です。
カニの甲羅にあるみそは、カニの脳みそではなく中(ちゅう)腸(ちょう)腺(せん)であり、軟体動物や節足動物の中腸に開く腺様組織です。それは脊椎動物の肝臓と膵(すい)臓の機能をもった臓器で栄養素をたっぷり含んでいます。(吉村忠与志・福井高専物質工学科教授)