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刀根瑛昌
トップページ > ニュース > 2009年11月 > 揺るがぬ漁師魂、成果半分「また海へ」 厳冬を追う、越前がに漁(5)
ズワイガニを狙い網を入れること三回。揚げるたびに狭い船首で、カニを網からはぎ取り、かごに仕分けしていく。揺れを気にしながら近づき撮影していると「はよ、こっちに戻れって」と岩崎船長の怒声が飛んだ。最も揺れの激しい船首。甲板を一歩踏み外せば、そこは冷たく暗い海。背筋にぞくっと悪寒が走った。
素人には立つのもやっとの強風が吹き荒れたため、午後十時を回ったところで、漁の中止が決まった。船長の弟の玉喜さんは「粘ればもっと取れるんだが…。自然には絶対に勝たれんわ」と悔しさをにじませた。結局漁の成果はズワイガニ五十パイとセイコガニ六十パイ。いつもの半分以下だ。
帰港したときには日付が回っていた。船酔い、悪天候、不漁の落胆で「もう、こりごり」とぐったりしていると、船長はあっさりと「今回は外れやったな」。悔やむ様子もなく、ねぎらいの言葉をかけてくれた。と同時に「今夜また海に出るか」と信じられない一言。漁師魂はちょっとやそっとのしけや不漁ではびくともしない。越前がにのおいしさの秘密が少し分かった気がした。(写真画像部・高橋良典)=おわり=