「かにまつり」のPRに奔走
池野政義
トップページ > ニュース > 2006年10月 > 食通を誘う不変の味、越前ガニ 無類のカニ好きが太鼓判
京都市山科区の木下清実さん(54)は、無類のカニ好き。日本海沿岸の街、いろいろなところで食べ歩き、各地に”おいしい”思い出が残っている。越前海岸には、家族のほか知人や仲間たちと一緒に訪れることが多い。経営する建築会社の社員旅行先に選んだこともある。「自分で満足している味だから、自信を持って仲間たちを誘うことができる」。越前ガニには太鼓判を押す。
ゆでガニ、甲羅焼き、雑炊、カニ料理なら何でも来い。今年に入ってから正月休みと二月初めの二回、越前海岸を訪れた。重油漂着のニュースは知っていたが、海底にすむカニには影響はないと思っていた。「いつものおいしいカニだった。舌が覚えている」。食べてみて、実感した。
福井県の越前海岸三町村の漁協でカニ漁を行っているのは越前町漁協だけ。現在、五十九隻の底引き網漁船が所属している。昨シーズンは三百二十七トンの越前ガニを水揚げした。県内全体では五百二十七トンで、同町漁協が六二%を占める。これらの漁船は、越前岬の沖合十一―十六キロ付近を漁場とし、水深二百五十―三百メートルの海底を底引き網でさらう。カニの漁場としては浅い方。浅いところに生息するカニは甲羅が硬く、身が引き締まっているという。
今シーズンは、重油流出による風評被害が深刻。神戸市でカニの安全PRを行うなどイメージ回復に力を注いだ。四日のセリでは、水ガニの値が例年並みに戻るなど少しずつ回復の兆しが見えている。国道305号沿いに並ぶ鮮魚店でも、カニをゆでる大がまの湯気が威勢を増してきた。
地元の漁師たちは、越前町で水揚げされる越前ガニに絶対の自信を持っている。それを扱う店でも同じ。どこへ行ってもカニへのこだわりが聞かれる。ヤマブキ色の甲羅と太い足が特徴。身やカニみそがたっぷりと詰まっている。だから型が小さいものでもほかの土地のものより重い。
カニはほとんどが地元の旅館や民宿に流れる地場商品。仲買人や鮮魚店から県外へも発送されるが、固定客が中心で都市圏の市場に並ぶことはほとんどないという。越前ガニの味を求めて、県外から足を運ぶ人は多い。店先で潮風に吹かれながら、カニ談議に花を咲かせる。窓の向こうに越前海岸を見ながら、旅館や民宿でじっくりとカニを味わう。海の町の雰囲気がおいしさを倍増させる。