競り落とすには度胸が必要
中橋睦男
トップページ > ニュース > カニ殻活用15年目 福井県あわら市の農家 堆肥化 子どもら粉砕作業 踏んでバリバリ
あわら温泉(福井県あわら市)の旅館で廃棄される越前がにの殻を、米や野菜作りの肥料に活用する「あわら蟹(かに)がらプロジェクト」が15年目を迎えている。1月下旬には11旅館から集めた殻約1トンの粉砕作業が同市内であり、子どもたちの足踏みに合わせバリバリと砕ける音が響いた。今後堆肥化して市内の農家で使われ、トマトやメロン、米が旅館などに提供され、循環していく。
カニ殻が敷き詰められた全長約50メートルのビニールハウス(同市轟木)は磯の香りが漂う。昨年11月の越前がに漁解禁後、12月末までの毎週旅館で回収し、ハウス内で乾燥させていた。
今年1月26日の殻踏みには農家、旅館の女将(おかみ)と家族ら25人が参加した。子どもや女将らが大量のカニ殻に「すごい!」と驚きながらあちこちを走ったり、跳びはねたりしながら、ザクザク、バリバリと殻が小さくなっていく感触を楽しんでいた。殻は粉砕器でさらに細かくし、土に混ぜて肥料にし、プロジェクトに参加する市内4農家が野菜、果物、米作りに使う。
プロジェクトは2011年、市観光協会が、生産者、旅館、消費者をつなぐエコ事業として始めた。19年から中心になって取り組む農家麻王伝兵衛さんは「カニの殻の成分が微生物を活性化させ、根の張りが良くなって葉や実に栄養が行く」と効果を語る。作物は「かにからとまと」「かにからめろん」「かにからこめ」などブランド化している。
殻踏みに初めて参加した旅館「灰屋」の牧田知栄美女将は「夏のお客さまにも、殻を使って育った野菜や果物で越前がにを感じてもらえる面白い活動。ハウスの光景も紹介したい」と宿泊客へのPRに力を入れる。
麻王さんは「あわらのみんなが関わって作られた食べ物のストーリーを知ってもらい、あわらファンが増えていったらうれしい」と話している。