トップページニュース開高健 > 開高健さんうならせた”カニ丼” 広まる「海の宝石箱」

開高健さんうならせた”カニ丼” 広まる「海の宝石箱」

2003年12月06日

開高健

開高さんが宿泊した部屋でどんぶりを手に思い出を話す長谷さん 「雄のカニは足を食べるが、雌のほうは甲羅の中身を食べる。それはさながら海の宝石箱である」。(開高健全集「越前ガニ」より抜粋)

 一九六五(昭和四十)年十二月の雪降る武生駅。作家、開高健さんが降り立った。グレーのハンチング帽にハーフコート。その年、従軍記者としてベトナム戦争の最前線を取材。疲れをいやす旅だった。

 福井県越前町梅浦、こばせ旅館の長谷政志さん=当時(33)=が軽自動車で迎えた。「偉い先生でしたから緊張してました。でも助手席に乗られて、ジョークを交えながら気軽に話し掛けてくれた」。

 一日目はズワイガニとセイコガニを出した。「むしゃぶるように食べていた。次の日の食事。何がいいかを尋ねると、何でもいいよ、といわれた。迷いました」。思いついたのが自身が小さいころに食べたカニ丼だった。

 直径三十センチ近くある越前焼のどんぶり鉢を準備した。ご飯を入れ、セイコ七匹分の身を載せた。開高さんは、はしを鉢に持っていき、一口食べて「うーん」とうなった。数口食べて「なるほど」。終わると大きな腹をたたき、うめくように「満足」と言葉を発した。

 「先生は胃袋が大きかった。あっという間。七回ほどいらっしゃってますが毎回、同じように食べていた。朝、日本酒を飲みながら、ということもありました」

 「赤くてモチモチしたのや、白くてベロベロしたのや、暗赤色の卵や、緑いろの”味噌”や、なおあれがあり、なおこれがある。これをどんぶり鉢でやってごらんなさい」(同全集)と記されている。

 しかしカニ丼の名前はなかった。「メニューにも載せなかった。でも、常連のお客さんの間で少しずつ広まってました」。一九九一(平成三)年の三回忌。鎌倉の墓前にカニ丼を持っていった。「最初に先生に出した気持ちを忘れたくない」との思いからだ。「開高丼。やっと名前が決まりました」と報告した。今、丼はカニのシーズン中、百杯ほど出る。東京などのマスコミ各社が取材する。

 「越前ガニが全国の人に広まる。うれしいですね」と七十一歳になった長谷さん。開高さんの命日の九日、鎌倉へ墓参りに行く。墓石は長谷さんが越前町厨で見つけたものだ。墓の周りには、長谷さんが送った水仙の花が咲き始めた。


おすすめの宿

おすすめの宿一覧

光風湯圃 べにや

光風湯圃 べにや

3年の構想を経て再建された"老舗旅館"

割烹旅館 越前満月

割烹旅館 越前満月

広大な敷地にわずか9室をしつらえた木造平屋造りの宿。広々とした部屋、和の庭園、贅を尽くした露天風呂付客室がお迎えします。

おすすめの料理店

おすすめの料理店一覧

長者町 いわし屋

長者町 いわし屋

至高のゆで蟹の秘密は絶妙のゆで時間

みくに隠居処

みくに隠居処

国内最上級品質の「三国産」越前がにを使用したコース料理が日帰りで楽しめる。家族や会社の小旅行などでも気軽にご利用頂けます。

越前かに料理「鹿島」

越前かに料理「鹿島」

三国の海・空そして極上の越前かにフルコース料理!

越前がに職人

一覧

「越前かに」の名付け親、知名度向上に貢献

壁下誠

詳しくはこちら

越前ガニのおすすめ料理

おすすめ料理一覧

越前ブイヤベース

越前ブイヤベース

4人分

越前がにの甲羅のうまみが絶品