至高のカニを確実に提供
刀根瑛昌
トップページ > ニュース > 越前がに解禁立派なズワイ次々 本紙カメラマンルポ
6日解禁となった越前がに漁。日本海側だけでなく、太平洋側でも大型クラゲ(エチゼンクラゲ)が大量漂着している状況で、漁師たちはいつもと変わらぬ漁を行えるのか―。福井県越前町高佐漁港の小型底引き網船「高砂丸」(19トン)に同行取材した。
高砂丸は高矢孝祐船長(50)=同町高佐=と3人の漁師を乗せ、5日午後10時半ごろに同漁港を出発、漁場へと向かった。高矢船長は「天気はここ何年かの漁で一番いい」という。高さ1メートルに満たない穏やかな波も豊漁を期待させた。
と、思ったのもつかの間。激しい船酔いと嘔(おう)吐(と)に襲われ、伏せたまま3時間、全く動けなくなった。「船酔いするもんが来てどうするがや」と、笑う漁師の姿も見られぬまま時間だけが過ぎた。正気を取り戻したときには6日午前0時の解禁時間はとっくに過ぎて、既に2回目の網が入れられた後だった。
水面に浮かび上がってくる網には、心配した大型クラゲの群れがあった。だが高砂丸は、水揚げ前にひもを引くとクラゲだけが海に流される独自の仕掛けを網に施してあった。大半のクラゲが網の外に出され海中に消えていった。クラゲがまだ小さいため、県が勧める改良網は用いていないという。
引き上げた網の中に大型クラゲは数えるほどしかなく、雄のズワイガニ、雌のセイコガニも甲板で威勢良くピンピンと動いていた。初漁で計6回網を入れ、ズワイ約40匹、セイコ約1千匹を取った。成果は昨年の初漁の3分の1ほどだったが、高矢船長は「ただの漁場の選択ミス」と話し、大型クラゲが漁に影響していないことを強調した。
帰港したのは午後1時ごろ。漁師たちはカニを陸に揚げると、間髪入れずにまた次の漁へと出て行った。「漁は今日だけやないから」と、明るく話す高矢船長。船酔いが残るうつろな状態のまま、たくましい後ろ姿に「次こそ豊漁を」と願った。