長年の経験と技術でカニの居場所探る
中野良一
トップページ > ニュース > 愛知出身の漁師奮闘中、越前町 蔵元さん「将来は船頭に」
福井県越前町高佐で、愛知県常滑市出身の蔵元慎也さん(31)が、漁師を始めて8年が過ぎた。区内では、県外出身者が漁師になり土地に残るのは初めて。結婚して、今年は区壮年会にも入るなど地域行事にも積極的に参加、地元に根付き始めている。
漁師になる前、東京や奈良で土木建築や工場関係に勤めていたが、違うことに挑戦しようと転職を決意。趣味が釣りだったこともあり、雑誌の漁師の募集記事がきっかけで、同区の高矢孝佑さん(50)の「高砂(たかさご)丸」で仕事を始めることになった。
仕事は過酷だった。船はイカやアカガレイなど捕る魚介類に合わせて、近くは沖合約12キロ、遠くは約50キロ付近の京都沖まで行く。船上で2泊する日もある。水揚げ量が多いと休む暇もない。それでも「網を上げる瞬間はドキドキして、ギャンブルのような感じ」。魚を見ると心が躍り、船上で食べる新鮮な魚の味も格別だという。
高矢さんは、蔵元さんの人柄について「素直で真っすぐ。仕事も熱心で、よく気が利く。若いわりには、しっかりしている。周囲もかわいがるし、すぐなじんでいた」と語る。
蔵元さんはもともと同区に住んでいたが、結婚した5年前に、近くの茂原区に住まいを移した。ただ、区民との交流は続き、今年は壮年会「高佐睦(むつみ)会」に誘われ入会した。「親しみやすくて、いい人ばかり。みんなともっと仲良くなりたいし、また高佐で生活したいと考えている。動機は安易だったけど、ここに来てよかった」と話す。
6日に解禁される越前がに漁でこれから忙しくなる。蔵元さんは「カニ漁は一年で一番の稼ぎ時。仕事というより戦い。将来、船頭になれるよう頑張りたいですね」と笑顔を見せた。