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納谷一也
トップページ > ニュース > 2012年7月 > カニ殻と微生物が米作りに効果 草桶・福井工大教授が研究
福井工大の草桶秀夫教授が、有機肥料の一つとして用いられるカニ殻と、特殊な微生物を組み合わせた米の土壌作り研究に取り組み、稲の生育に効果的という実験結果を得た。微生物がカニ殻粉末の分解を早めるのが要因。米のブランド化を目指す農家団体から実用化を期待する声が上がっており、草桶教授はさらに研究を進める。
カニ殻に含まれるキチンという成分は、土壌を活性化させたり、病害虫の増殖を抑える働きを持つ。県内外でカニ殻を用いた農法は既に行われている。
今回初めて組み合わせたのが、微生物「パエニバチルス フクイネシス」。草桶教授が1990年代に発見し、カニ殻の分解を早める特性を突き止め調べてきた。
農地での実験は昨年4月下旬から福井県大野市上丁(かみようろ)の水田で、農家の協力を得て行った。田植え前の1アールの田んぼに、水産業者から集めたカニ殻の粉末1キロと、独自に培養した微生物の希釈液1リットルを投入。カニ殻のみを使った隣の田んぼと比較したところ、稲の長さや1株当たりの稲穂数が向上した。うまみを表す数値も高くなったという。
ただ、粒の重さはカニ殻のみの田んぼに及ばなかった。草桶教授は「今回は田植え前に投入したが、投入時期をずらすことで結果がさらに良くなる可能性がある」とし、今年は稲の育成期の7月に投入して、違いを調べる。
取り組みは農家団体から注目を集めている。越前がにの漁獲量が多い越前町の「丹生の里山米生産会」は、有機栽培米の「福井越前かに太郎米」を生産している。しかし、名称は地域性にちなんだものでカニ殻は使っていなかった。
草桶教授の取り組みを知り、「名実ともに“カニゆかり”の米にしたい。越前町の土壌にも適しているのか調べてほしい」と実験を依頼した。5月に入って同町内でもカニ殻と微生物の農法がスタートしている。
同会は成果が実証されれば対象の田んぼを拡大し、米のブランド力を高めたいとしている。対象農地を広げるにはカニ殻と培養液が大量に必要となり、入手先の確保が課題となる。同生産会事務局の来田建治さん(50)は「地元の水産業者などと協力体制を話し合いたい。全国に誇れる米ができたらいい」と期待を寄せている。