長年の経験と技術でカニの居場所探る
中野良一
トップページ > ニュース > 2011年11月 > 年に1度の“光景”越前がに漁解禁前夜 底引き網船一斉出漁
福井県越前町の越前海岸沿いで、年に一晩しか見られない光景がある。越前がに漁解禁の間際、港の沖合に浮かび上がる漁船の“結集”だ。今年も5日夜に約50隻が出そろい、午後10時半の合図とともに一斉に漁場に向かった。(嶋本祥之)
船が多く停泊している小樟(ここのぎ)、大樟(おこのぎ)両港では午後9時20分、20隻以上の小型底引き網船に作業灯がともり始めた。ドッドッドッとエンジン音が響く中、漁師たちは船上で漁具の最終点検を開始。安全と大漁を祈り、一升瓶に入った日本酒を船の至る所にまくなど、初漁に向けて表情は緊迫していた。妻や子どもら家族は船を温かく見守り、「パパ、じいちゃん気をつけて」「ようけとってきとっけの!(いっぱいとってきてね)」と声を掛けていた。
同9時50分、船は次々と出港。家族や住民は、様子が一望できる国道305号の高台に急いで移動、付近には車がずらりと並んだ。船は沖合約2キロ以内でいったん待機。同10時半、無線で全船に出発の合図が下ると、幻想的な“明かりの群れ”となった船は、列をつくり一斉に西へ向かった。
同町漁協によると、解禁前に沖合で待つのは、手が入っていない新鮮な漁場に一刻も早く到着したいためで、一斉出漁は漁師の士気も高めるという。毎年の習わしだが、漁師らは「深夜の風習だけに、地元以外に知る人は少ないだろう」と話していた。シーズン中は午前0時前後の出港が多いが、波次第で時間は毎日異なり、沖で待機することもない。
この日は同町から小型46隻、大型6隻が出漁。漁場が遠い大型船は午後6時ごろに港を出た。