競り落とすには度胸が必要
中橋睦男
トップページ > ニュース > 2001年1月 > 世界に通用する味「越前がに」 グローバルブランドへ、福井・成前
人口減少や高齢社会を迎える中、地域資源を見直し、活性化につなげようという取り組みが各地で活発化している。自然や歴史・文化、食、伝統工芸などはその地域ならではの強み。福井県にも越前がにや恐竜など、全国に誇れる「地域ブランド」は数多く、ビジネスに生かす企業も現れている。地域資源に磨きをかけ、魅力ある「ふくいブランド」として活路を探る動きを紹介する。
福井のブランドで真っ先に思い浮かぶのは「越前がに」。昨年11月、福井市順化1丁目に「ゆで小屋」を新築し、越前がに販売専門店「成前」を立ち上げた「寿し吉田」3代目の田畑健太郎さん(32)は「越前がにを世界のブランドにしたい」と意気込む。
2008年、伝説的なカニゆで名人として知られる石川県かほく市の中川隆さん(77)に弟子入りした。「技を盗め」。師匠のアドバイスはそれだけだった。カニのシーズン中は、すし職人として夜中まで働き、車で通い、朝方まで修業を積んだ。睡眠時間を削り、休みは一日もなかった。
ゆで方、火加減、塩加減…。湿度やカニがとれる漁場によってゆで方は違った。奥の深い世界を学んだ。
2010年3月、中川さんが黙って3冊のノートを差し出した。小さな文字で秘伝の技がびっしりと書き込まれていた。そして中川さんは引退した。
ゆで小屋の中央には、中川さんから譲り受けたれんが釜がどっしりと構える。田畑さんは「魚が苦手な外国人はいるけど、カニはみんな好き。本物の味を世界中の人に提供したい」と夢を語る。
販売はすし店のほか、インターネットでも受け付け、ホームページでは、ゆでの作業を生中継している。世界ブランドを目指すその姿を、世界へ発信し続ける。(堀英彦)
カニ加工品も豊富に
すし店の初味本店(福井市)は、セイコをしょうゆだれに漬け込んだ高級珍味「越前 蟹乃醤(かにのしょう)」を開発。カニ身と内子、外子それぞれの味わいが楽しめる。
料亭の開花亭(同)の生ふりかけ「蟹の淡雪」は、ズワイの足の身をほぐし福井の地酒と酢に浸し仕上げた。民放のテレビ番組で紹介され認知度が急上昇。国際線ファーストクラスの機内食としても採用されている。
越前がには、大リーグのイチロー選手との共演も果たしている。同市の旅館の女将がイチローにカニの身の取り出し方を教えるビールのCMは、昨年11月23日から約1カ月、お茶の間をにぎわせた。