トップページニュース > 唸り、むさぼる越前がに ふくい文学歳時記

唸り、むさぼる越前がに ふくい文学歳時記

2013年02月27日

セイコガニ8杯が盛られた「開高丼」=越前町の「こばせ」 昂揚(こうよう)。開花。躍動。豪奢(ごうしゃ)。ものもいわずにむしゃぶりつく。とろりと清雅な脂ののった白く豊満な肉に紅(べに)が一刷き散ったのをいくつもいくつも酢醤油の鉢のなかへほりこみ、チマチマとではなく、ガップリと箸ではさんで頬ばるのである。この瞬間。完璧な充足。決定的で完璧な瞬間。

開高健「北陸の味覚 王者の奢(おご)り」(「開口一番」新潮文庫)

〈極上の越前がにを皇室へ 坂井・三国の鮮魚店で調理〉。さきに本紙の記事にあった。献上のそれはさぞや美味なことだろう。いやあ蟹(かに)が食いてえ。でもさ蟹は高すぎよ。というわけでこの冬も口にできそうにない。それにつけても、ここに掲げる蟹のまあ、たまんないこと。

開高健(一九三〇~八九)は、祖父母と実父が坂井市出身で福井にゆかりが深い作家だ。自伝的小説「青い月曜日」には、戦中に祖父、叔母が丸岡に疎開、戦後に米の買出しに来たことが描かれている。開高さんは行動する作家であり、世界を股に掛け、飲み、食べ歩いた食通だ。グルメの文章の絶品なること、じつにその食の形容詞の多彩、絶妙さは超極上の味わいがある。まさにエロチックなまで。

「越前ガニは世界一うまい食べものだ。私は毎冬家族連れで食べに来ている」。という開高さんが贔屓(ひいき)にしたのは越前海岸の波打ち際に立つ旅館「こばせ」。最初、昭和四〇年冬、「蟹を食べさせてよ」「蟹だけでいいんだヨ、ね、ね。いい?」と言って見えた。で主人は、古九谷の大皿に山盛りにした蒸したての蟹を出した。すると開高センセイ、「うーん」と唸(うな)りながら、豪快にむさぼり食いつくして絶句するのだ。

「フランスのメーヌの蝦(えび)、ベェトナムのキャプ・サン・ジャックの蝦、香港のアバディーンの生簀(いけす)からあがる蝦、みんな食べてみたが、日本海の蒸したての蟹ほどのものがあるだろうか」

それだけでない。「淡泊、純粋透明の結晶で、舌へのると、水のようにとけてしまう」生け作りの刺身。さらにあの甲羅酒とくるのだ。

以来、越前蟹の虜となった作家は、たびたび足を運ぶことに。あるとき主人がいたずら心から「先生、海の宝石箱をひっくり返してみました」と蟹丼を出した。するとセンセイ、五、六人分のセイコ蟹の入った丼を一気にたいらげたとか。この蟹丼、「開高丼」の名で当旅館のメニューに登場するとか。

開高センセイ、「こばせ」に蟹をめざして訪れること十数回。最後に顔を見せたのは八九年、なんともその一二月に逝去されているとは。ところでセンセイが主人に贈った色紙が宜(よろ)しくあるのである。

「この家では、いい雲古(うんこ)の出るものを、食べさせてくれます 保証します 開高健」

(詩人、大野市出身)


関連するニュース

全て見る

おすすめの宿

おすすめの宿一覧

ホテル割烹 石丸

ホテル割烹 石丸

目の前でさばかれる極上の越前がにに舌鼓。日本海を望む絶景と四季折々の海の幸、心くつろぐ安らぎの時間を味わえます。

望洋楼

望洋楼

お客様の喜びを追求、進化する宿。ご主人自らが選び抜いた至高の越前がに料理は圧巻。眺望絶佳の露天風呂でごゆるりと。

越前の宿 うおたけ

越前の宿 うおたけ

熟練の仲買人が営む宿で、越前がにの新鮮さは折り紙つき。自慢の展望温泉にゆったりとつかり、ご褒美のひとときをあじわえます。

おすすめの料理店

おすすめの料理店一覧

開花亭

開花亭

国指定有形文化財に選ばれた歴史ある老舗料亭。ここでしか出会えない、職人技が光る贅の限りを尽くした越前がに料理を堪能できます。

旬味 泰平

旬味 泰平

四季折々の旬の味覚を楽しめる店。越前がにを引き立て、より美味しく味わうための“合間の一品料理”にもこだわるおもてなし。

らでん

らでん

越前がにを極めて30年以上。県内一のかに問屋が営む日本食レストランで、越前海岸と同じ最高の鮮度と味のカニを楽しめる。

越前がに職人

一覧

至高のカニを確実に提供

刀根瑛昌

詳しくはこちら

越前ガニのおすすめ料理

おすすめ料理一覧

越前かに玉

越前かに玉

4人分

カニのうま味が凝縮

越前かにニュース (月別アーカイブ)