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中瀬康雄
トップページ > ニュース > 2005年1月 > 銀座で越前がにフェア 戦略的にブランド高めよ
「冬の味覚の王者」と形容され、全国に誇る福井ブランドの代表である越前がにのフェアが一月、東京・銀座のデパートで初めて開かれた。首都圏に越前がにを売り込むにとどまらず、ブランドとして「福井」をアピールしていく試みとして注目したい。
越前がには、間違いなく全国に通用する福井のトップブランドだ。地域ブランドに関する調査、相談を展開するブランド総合研究所の二〇〇七年の調査で、越前がにの購入意欲度は食品分野全体で十六位、認知度も魚介類の中で二位となっている。
また、漁獲量は兵庫、鳥取両県に次ぐ三位ながら一キロ当たりの単価(浜値)は全国一位。全国に先駆けて黄色いタグを付けて他府県との差別化を図るなどブランド価値を高める取り組みが市場でも評価されているからだろう。
しかし、巨大市場である首都圏の食卓から見ると、縁遠い存在だ。
「テレビ番組などで取り上げられていることもあり、ズワイガニだけでなくセイコガニまで東京で知名度は十分にある。ただ一方で、現地に行かないと食べられないとのイメージもある」と指摘するのは、フェアを開催したデパートの担当者。越前がにを取り巻く現状を言い当てている。
銀座は、多くのデパートが立地する屈指の激戦地。食材に対しても目の肥えた消費者が集まってくる。そこから越前がにをアピールしていくことは、単なる消費拡大の域を越えて、福井の情報発信やイメージアップにつながるというのがフェアを企画した県の狙いだ。
しかも、デパ地下での販売だけでなく、都内で越前がにを食べられる料理店をリスト化して配布。また、県の働きかけが実り、十一月六日の都内の夕刊各紙には、福井県でのズワイガニ漁の解禁を報じる記事が掲載された。
認知度の底上げには、こうした地道で総合的な取り組みが求められる。
越前がにをめぐるもう一つの課題は、単体のイメージにとどまっている点だ。今回、ゆでガニとしてだけでなく、弁当、総菜の三本柱で売る形にした。鯖江市のホテルはスイーツなどのネット通販で実績を上げ、セイコガニのグラタンも数万個の売り上げを誇る人気商品に育っている。首都圏で安定的にカニを売るには流通面での問題もあろうが、料理、加工品として付加価値をプラスし、ストーリー性を持たせるなどブランドとして発展させていくことを期待したい。
ブランドの構築には、福井という地域らしさ、素材へのこだわりに加え、消費者の心に響くような提案、仕掛けが不可欠。一回限りでない息の長い取り組みも求められる。越前がにに続く福井ブランドを育てていくためにも、総合的な戦略を練ってほしい。