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蟹の文学コンクール入賞作品紙上紹介・講評

2000年11月21日

蟹と水仙の文学コンクール

■詩・講評
詩部門選考委員代表
広部英一

表現に新鮮味、ユーモア

  読んで楽しい作品がそろっていた。サワガニ、磯(いそ)ガニ、松葉ガニなどどんなカニを取り上げてもいいのだが、結果的にやはり越前ガニを題材にした作品が多く寄せられた。

 一般の部で大賞を受賞した「窓の外、窓の中」は家族でカニ鍋(なべ)を囲んだ日の思い出を書いた叙情詩で「昆布がゆらめいたら/白菜だの菊菜だの野菜を入れ/それが煮えたら蟹を入れて蓋をする」などの表現に新鮮味があり、冬の夜の外の静けさや家の中の暖かさが感じられる香り高い作品であった。

 高校生の部大賞「さる、蟹合戦」は好物のカニを題材にした意欲作で、表現や構成に工夫があり、特にユーモアが大きな魅力。中学生の部の大賞「カOニ」は自然に生きているカニの生き方に深く心を寄せながら書いた作品で発想の素直さに注目した。また、小学生の部の大賞「カニさんになって」は赤ちゃんや妹のユーモラスな様子を見ながら「カニさんみたいだね」と書いた、かわいい作品であった。

■俳句・講評
俳句部門選考委員代表
川上季石

様々な視点と思い、身近に

 小中学生の皆さんはほとんど普段の話し言葉の句です。それが五七五になっていてしかも韻を含んで弾みながら楽しい句になっている。高校になると一般の部のように文語体に理解を示しより韻文である現代俳句に共感した作風が多く見られる。

 またテーマのカニをいろいろな視点、思いで詠んでカニがより身近なものになったのではないか。

 小学生大賞の坂口君の作品はこの句の下五「うごいてる」がよい。手足を動かし白い泡を吹いている深海の生き物、それが生きて目の前にいるではないか。どうだこのカニはじいちゃんが遠い荒海で取ってきたんだと誇らしげでもある。

 中学生大賞の伊勢君の作品は「僕」の一語が目をひく。大人の俳句には見られないもの。僕という少年の顔が大きく浮かび上がってくるようでカニと僕と冬とが鮮やかに結びついているようである。

 高校生大賞の安川君の作品は冬の朝焼けの中を船名の旗をなびかせて漁船が帰港した様子を詠んだもの。港は活気づきカニの大漁を感じさせ明るく勢いのある句となっている。古典的句型を迷いなく自分のものにしている。

 一般の部の平野さんの作品は粉雪の路傍でゆで上がったカニ、その親指や足を素手で折っては食っている光景が越前ガニと言われるゆえんを真っ向から詠んでいる。


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