漁船と連携し品質を判断
田村幸次
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全国にとどろく福井ブランドといえば、冬の味覚の王者「越前がに」だろう。何しろ受験料三万円、日本一高額な「越前カニ検定」が昨年度開かれた。知名度は高い▼もちろん試験後にはパーティー付き。カニ料理や福井の地酒も楽しめるのだから三万円も仕方ない。それにつけても今やカニは高嶺(たかね)の花になってしまった▼黄色いタグ付き、正真正銘の雄のズワイガニは年に一度お目にかかれば幸い。昔はおやつ代わりといわれた雌のセイコガニでも気合が必要。ボーナスや宴会の時期が相場である▼「ズワイガニもよく食べるんでしょ」。県外の人に聞かれて口ごもる。そんなとき食通で知られる福井県ゆかりの作家、開高健を引き合いに出す。名文とされる「越前ガニ」である▼「雄のカニは足を食べるが、雌のほうは甲羅の中身を食べる。それはさながら海の宝石箱である」「私にいわせると雌のほうがはるかに深く広大で起伏に富んだ味を持っている」▼さらに開高は甲羅を外して、赤くてモチモチした内子や白いベロベロ、暗赤色の外子や緑色のミソを説明。「なおあれがあり、なおこれがある」と最高に褒めそやす▼唾(つば)を飲む”セイコ賛歌”である。ズワイガニに縁遠い人には説得力十分の理由になる。不景気とはいえボーナス時期。今冬のセイコガニは若干高いらしいが、開高がいうところの”海の宝石箱”を味わうのは至福である。