トップページニュース1996年10月 > 水仙と港の町・越前 梨子ケ平周辺

水仙と港の町・越前 梨子ケ平周辺

1999年01月12日

風景

 荒れる冬の日本海が迫る呼鳥門。(挿絵)打ちつける冷たい風と波が岩壁を削り、長い年月をかけてこの自然のトンネルを造り上げたのだろう。現在は土砂崩れ事故防止のためコンクリートの門も造られた。「昔より趣がなくなってしもたねぇ」と話す地元の人の声。しかし、逆に自然の驚異を示しているようにも思えた。

 呼鳥門近くの左右(そう)区。急勾配(こうばい)の狭い道路を上る。十軒ほどの古い家が並ぶ集落からさらに山道を上がっていくと、眼下に水平線が一望できる所に出た。急斜面に広がる緑と黄色の大地。何万本もの水仙が冷たい冬の雨風に耐えながらけなげに咲いていた。まさに水仙のじゅうたん(写真上)。すべて人の手で植えられたものだという。水仙の姿は厳しい自然と向き合う地元の人々の暮らしぶりを連想させる。

 小道をさらに進んでいくと、小高い丘の上に石の御堂があった。中には女性の石像が安置されている。地元の人によると、「坂ケ平(さかんじゃら)の石像」と呼ばれる水神様で、海上安全を祈願して祀(まつ)ったものだという。この像を西向きに置いても、いつの間にか東向きに戻ってしまうといわれ、東方の六所山山頂の神と、この神が夫婦であるためと伝えられている。十人ほどが座れる御堂の広場では、昔から神楽を出して小さな祭りを開いてきた。現在でもその名残から毎年五月三日に付近の人たちが集まり、酒を酌み交わすという。

 山すそに「千枚田」と呼ばれる段々畑が広がっていた。今はほとんどの田が水仙に転作したため”千枚畑”となっており、緑と黄色の幾何学模様に見える。この急斜面を開墾した先人たちの苦労がうかがえる。

 海岸線の国道305号沿いの「水仙ランド」にも水仙が咲き誇っていた。展望台からは水仙畑と越前岬を一望できる。また、自然文学資料館には、開高健、水上勉ら越前岬に魅せられた文人たちの想いをつづったパネルが紹介されていた。高台に上がると一九四〇(昭和十五)年に初点灯された越前岬灯台が見えてきた。海に生きる人々を守り続けて約六十年。水平線をバックに白く真っ直ぐに立つ姿は頼もしくも見える。

 玉川トンネルの近くには玉川洞窟観音がある。越前岬の突端の岩窟の中にあったが、八九(平成元)年の岩石崩落事故後この場所に移された。小さな地蔵が並ぶ中、十一面菩薩(ぼさつ)像が祀ってある。たくさんの人々がろうそくに灯をともし線香をたいていた(写真下)。この像は古代唐製と伝えられているが、三国伝来説、泰澄大師自作説などもある。地元の民が海上安全を祈って崇拝してきたものだという。

 入り口の石碑には「災難の 風が吹くとも たのもしや 楯の岩屋に

 こもる身なれば」と刻まれていた。越前海岸の岬の厳しい自然をあらためて感じさせられた。


おすすめの宿

おすすめの宿一覧

光風湯圃 べにや

光風湯圃 べにや

3年の構想を経て再建された"老舗旅館"

割烹旅館 越前満月

割烹旅館 越前満月

広大な敷地にわずか9室をしつらえた木造平屋造りの宿。広々とした部屋、和の庭園、贅を尽くした露天風呂付客室がお迎えします。

おすすめの料理店

おすすめの料理店一覧

開花亭

開花亭

国指定有形文化財に選ばれた歴史ある老舗料亭。ここでしか出会えない、職人技が光る贅の限りを尽くした越前がに料理を堪能できます。

らでん

らでん

越前がにを極めて30年以上。県内一のかに問屋が営む日本食レストランで、越前海岸と同じ最高の鮮度と味のカニを楽しめる。

みくに隠居処

みくに隠居処

国内最上級品質の「三国産」越前がにを使用したコース料理が日帰りで楽しめる。家族や会社の小旅行などでも気軽にご利用頂けます。

越前がに職人

一覧

「越前がには日本で一番おいしいカニ」

田村幸一郎

詳しくはこちら

越前ガニのおすすめ料理

おすすめ料理一覧

カニのあんかけチャーハン

カニのあんかけチャーハン

2人分

カニチャーハンにとろ~り、あんをかけてプロ風の仕上がりに。