「かにまつり」のPRに奔走
池野政義
トップページ > ニュース > 【地域】フォローアップ 福井県越前町ふるさと納税額 返礼品充実で3倍超 本年度5億円迫る サイト改善も奏功 町、PRへ体制強化
福井県越前町の本年度のふるさと納税の寄付額が、過去最高の5億円近くに達する見込みだ。これまでの最高は前年度の1億5千万円で、3倍以上となるのは確実。返礼品に地元産のブドウや越前水仙などを新たに加え、仲介サイトの写真を一新したのが奏功した。町は新年度「ふるさと納税室」をつくり、返礼品の一層の充実や情報発信の強化に努める。
町が本年度用意した返礼品数は約460品目。泰澄の杜(もり)で生産している大粒の黒ブドウ「ブラックオリンピア」や、梨子ケ平の越前水仙などを加え、昨年度から倍増した。
本年度のふるさと納税件数は2月末現在約2万3千件。ブドウには68件、水仙には54件の寄付があった。地域創生室の担当者は「ブラックオリンピアは後味が爽やかで、はちみつのような味わい」とPR。水仙は「見頃を迎えた昨年末に寄付件数が伸びた」という。
コメの返礼に対する寄付は昨年度の約300件から、8千件以上に大幅に伸びている。新型コロナウイルス禍に伴う国の補助事業で8~9月に市価より安く調達でき、寄付額を前年度より低く設定できたことが大きかった。ブランド米いちほまれが、仲介サイト「ふるさとチョイス」の人気ランキング入りしたことで、さらに件数を伸ばす効果もあった。
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“主力”の越前がにも例年通り人気が高い。中でもセイコガニの甲羅盛りが一番人気で、個数や重さ別に用意した14種類で計5千件以上の寄付を受けている。寄付額100万円に設定している越前がに「極」などと比べ、同1万円台と“お手頃”なのが好評を得ている。
仲介サイトの返礼品写真を新しくしたことも効果があった。越前がにはカニそのものの単調な写真だったのを、黄色いタグを強調したり、調理したものを盛り付けたりして見栄えを重視。「濃厚なカニ味噌たっぷり!」などの言葉も添え、閲覧者の関心を引いた。
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全国の自治体が返礼率を引き上げていく中、町は2018年度まで返礼率を「寄付額の1割」にとどめていた。このため16年度に約8千万円あった寄付額は、18年度に約2千万円まで落ち込んだ。しかし、19年度に返礼率を3割に上げると7千万円超に回復。昨年度はコロナ下の巣ごもり需要の高まりもあって1億5千万円まで伸びた。
福井県定住交流課によると、今年1月末時点の県内市町へのふるさと納税寄付額は、敦賀市が74億7千万円でトップ。坂井市13億8千万円、越前市6億3千万円と続き、越前町は4億6千万円で4位となっている。
町の財政は、経常収支比率が県内ワースト2位の97.6%(2020年度)と硬直化している。財政力指数も県内で下から4番目の0.34で、地方交付税など依存財源に大きく頼る構造となっている。
そうした中、ふるさと納税による寄付は「貴重な自主財源」。リピーターを増やせば財政面だけでなく、交流人口や関係人口の発掘、拡大にもつながる。町の担当者は、新たに設ける室で「カニに頼りすぎず、新たな“ヒット商品”づくりに力を入れていきたい」と話している。